ラ・ヴァレーヌのラグゥをひとつずつ見ていくことにする。フランス語は現代の綴りにしたが、文法や語彙は原文のまま。注をつけておくので適宜参考にされたい。

16. 山うずらのラグゥ仕立て Perdrix en ragoût

Prenez vos perdrix1, habillez-les2, et les piquez3 de trois ou quatre lardons de gros lard4, puis les farinez5 et les passez6 dans la poêle avec lard ou saindoux; ensuite faites-les cuire dans une terrine, bien consommer7 et assaisonner. Lorsque vous voudrez servir prenez du lard et le battez dans un mortier, mêlez le dans votre ragoût8, et servez.
山うずらを掃除し、拍子木に切った背脂3〜4本を刺す。小麦粉をまぶし、背脂かラードを熱したフライパンで焼く。これを陶製の鍋に入れる。(ブイヨンを注いて火にかけ、)完全に火を通す。味付けする。背脂を鉢に入れて叩き、提供直前に混ぜ込む。


  1. 山うずらとちりめんキャベツ」参照。 
  2. habiller は「着せる」ではなく「身支度を整える」のイメージ。つまり余分な部分は切り落し、きれいに整形することなので、この1語で羽をむしり、首づるを落して内蔵を取り除き、必要に応じて腿を固定するという一連の下処理の作業を表している。ラ・ヴァレーヌ以前、つまり中世の料理書であればさらに「下茹でする」ところ。実際、ラ・ヴァレーヌでも肉を炒める(焼く)前に下茹でする指示がされているレシピもある。なお、ここでは「切り分ける」とは言っていないことに注意。また、ここで使用される山うずらが「複数」であることにも注意。 
  3. piquez-les 
  4. gros lard は豚背脂で赤身肉が付いていないものを言う。 
  5. farinez-les なお、素材に小麦粉をまぶしてから炒める、炒めてから鍋に小麦粉を振り入れる、別鍋に油脂を熱し小麦粉を炒めてから煮汁に加える、等の方法は17世紀以降に一般化した。 
  6. passez-les. passer は「漉す」ではなくこの場合は「フライパンで焼く」。ただしどの程度の火力を用いるか、焼き色を付けるかどうかは記されていない。 
  7. consommer は「完成させる」の意。また、煮るためには何らかの液体を注ぐわけだが、ここでは自明のこととして明記されていない。ラ・ヴァレーヌの他のレシピとの比較から、「ブイヨンを注ぐ」という指示が省略されていると考えるのが妥当だろう。また、「陶製の鍋」を用いることから、弱火でじっくり時間をかけて煮ることが推測される。さらに、この consommer「完成させる」が煮汁を煮つめることも含意している可能性に留意すること。 
  8. 現代なら、仕上げとしてバターを混ぜ込む(monter au beurre 日本語では「ブールモンテ」などと呼ぶことが多い)ところ。 
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