『ル・ギード・キュリネール』新訳の意義とは?

大仰なタイトルを付けましたが、ひとりごとみたいなものです。FBに投稿したけど、ブログ向きかな、と。


たまたま複数の編集者さんと電話やメールでのやりとりがあって、まぁいろんな話をしたんですけど、その後ちょっと落ち着いて、オールドクロウなんて安酒でちょいと晩酌しながら、ふと、『ル・ギード・キュリネール』の新訳をやる意義って何なのか? といういまさらな疑問に立ち戻ってしまいました。

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べ、別に日本のフランス料理業界のためなんかじゃないんだからねっ(笑

FBに投稿したものを一部(かなり?)改変してアップします。


今回のエスコフィエ『ル・ギード・キュリネール』新訳への取り組みにおいて、僕はカネ儲けをしようとは思っていません。もし出版社が動いて、翻訳料あるいは印税をくださるというのであれば断わる理由はありませんが……もちろん、その場合は原稿作成に直接協力してくださった方には応分で分配させていただきます。でも僕自身期待していませんので、協力者の方々もおカネの面での期待はなさらないでください。そもそも、紙の本として出版出来る可能性は現状、かなり低いと思っていたほうがいいでしょう。

じゃあ何故いまごろになって、とか、ロハ覚悟でどうして? という疑問は当然のことだと思います。

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こういうの「悪文」って言っていいかなぁ

『ル・ギード・キュリネール』第二版への序文の冒頭

Au seuil de la deuxième édition d’un ouvrage auquel la faveur de nos collègues assura un succès dépassant nos plus ambitieuses espérances, ce nous est un impérieux devoir d’exprimer à ceux-ci notre profonde gratitude et de remercier nos lecteurs; aussi bien ceux dont nous avons recueilli les précieuses approbations que ceux qui nous honorèrent de critiques utiles, dont nous nous sommes efforcés de tenir compte dans la mesure où elle nous on paru justifiées. (p.VII)

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内部参照の問題

翻訳作業の進行管理を現在のクローズドな Bitbucket のままにするか、フルオープンな Github に移行するかという問題。

Github フレーバーの markdown でも、自動でリンクが生成されないとはいえ、Github 上のファイルをブラウザで見ると脚注がちゃんと表示されることがわかった。

なら、Github フレーバーでいいんじゃないか、とも思うが、『ル・ギード・キュリネール』の場合、電子文書(なんかお役所的な表現だなぁ)としても、紙の本の原稿としても成立させられるフォーマットとして考えたとき、内部参照の問題がどうしても出てくる。

たとえば、原書425ページに出てくる「牛フィレ フィナンシエール」のレシピの原文は……

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『ル・ギード・キュリネール』新訳プロジェクトに Bitbucket を使う理由

翻訳作業の協力を募っていて、手を挙げてくださる方もいるのだが、バージョン管理に用いている Bitbucket と markdown 書式対応エディタ(Atomなど)あたりの問題が、敷居を高くしているんじゃないかと危惧している。

そんなわけで、なぜ翻訳作業に、本来はプログラム開発用のツールである Bitbucket を使っているのか、簡単に説明しておく。メリットは、ファイルに手を加えて「コミット」(=サーバーにあるファイルに対して変更を提案すること、新規にファイルをアップロードすること)すると、それが記録されて、前の状態のファイルと違うところを色違いで表示してくれる。

以下はスクリーンショットなのでちょっと見辛いかも知れないが、

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「頑張れ!」は辛いけれど「出来る範囲でいいから一緒に頑張ろう」なら……

僕としては珍しく、プライベートにかかわる事を書きます。あと、公に書いちゃマズいかどうか微妙なことも。だから、訂正する可能性はあります。

比較的よく知られていることだと思うけれど、「うつ」の人に「頑張れ」は禁句。やる気が出ないというのも、個人的な経験で言えば、病気が悪化するにつれ、意欲さえ持てないことそれ自体が常に辛くてしょうがなくなってくる。というか、断続的に「生きててスミマセン」な状態が続いたりする。

そんな時に「頑張れ」と言われると、頑張れない自分の存在そのものがいけないんだろうという気分になって、余計に沈んでしまう。

でも、快方に向っていくにつれて、自分から「頑張ってみようか」と思ったりするのだから不思議なものだ。

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エスコフィエ『料理の手引き』翻訳作業協力者を募集します

当面のあいだ、この投稿をトップに表示させてください。

以下の文も先日FBに書いたものですが、あらためて自分のブログで公開します。


エスコフィエ『ル・ギード・キュリネール』英訳本の第5版にはヘストン・ブルメンタールが序文を寄せています。カバーには “We eat as we eat because of Escoffier” とあります。ヘストンはその序文で自らを “self-taught chef” だと言っています。フランス料理業界的な日本語だと「独学者」とか「オートディダクト」ですね。

その self-taught chef、日本で一般むけには「奇想天外な料理を作るシェフ」みたいに紹介されることも多いようですが、ものすごくいろんな店で食事をし、ものすごくたくさんの料理書を読んで、当然ながらそれらの料理書にあるレシピをいろいろ作ってみて、その結果として self-taught chef になったわけです。

その序文の中ですごくいいことを書いているので、一部だけ日本語に訳して引用させてもらいますと……

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個人的近況と翻訳協力者募集について

先日、FBにアップした文章ですが、考えてみればあそこはコメント機能をオフに出来ない仕様なんですよね。やっぱり今後は自分のサイトで書いたほうがよさそうです。というわけで、かなりの長文ですが、一部書き直して……


じつはこの数年「うつ」に苦しんでいました(なかなか言い出せずにいました。野菜の取引先の皆様にも伝えられずにいました。まことに申し訳ありません。気持ちの上でどうしても直接お伝えできませんでした。不思議なもので、今から思うと「なんであんなに辛い状態で何年も過していたのだろう?」と思うし、ようやk比較的すんなり状況を語れるようになってきたと自分では思っています)。

この夏に、愛猫が死に至る病(腎不全)になり、どうするかさんざん逡巡し、きちんと最期を受け止めるために思い切って自分も精神科を受診しました。愛猫はまもなく最期を迎えました。14歳。いまどきは20歳を越える長寿の猫もいるそうですが、泌尿器系のトラブルが多い猫だったので、寿命だったのだと思うよう努めています。

僕自身も精神的にかなり辛い状態が続いていましたが、受診したのがよかったのでしょう。抗うつ剤も効いてきて、多少なりも気持ちの整理もつき、少しずつ快方に向かっています。(でも、まだ完全じゃないです)

いくらか元気も出てきたので、ずっと放置していたエスコフィエの Le guide culinaire 新訳に再度、取り組もうと思いはじめました。どうせならまったくのサラの状態からやり直したいと思い、この3日ほどで本文10ページくらい訳しました。

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14世紀の食品偽装?

(メモ書き)

Poullaillier という語を DMF で調べていて興味深い用例を見つけたので、原典にあたってみる。DMF の見出し語は poulailler だが、poulaillier もおなじ語。中世フランス語の綴りは結構流動的というか不安定。

問題の用例は、1380年のフランス王家の出納簿。Comptes de l’hôtel des rois de France aux XIVe et XVe siècles, Mme Ve Jules Renouard, 1865, p. 9.

De Jehan Bienfait, poullaillier, pour une amende en quoy il avoit esté condampné envers le Roy par les maistres d’ostel, pour connins qu’il avoit pris et aidé à prandre en la garanne de Saint-Cloust, comté par Guillaume Brunel, marchant de toiles, qui avoit baillé touailles et nappes pour la despence de l’ostel, senz lectre. Rabattu de la somme dudit Guillaume 120l.p.

Somme pour recepte commune 1,880 l.p.

ジャン・ビアンフェなるプーライリエが、自分で穫った兎をサンクルー産兎であるかのように販売したと訴えられ、罰金を課されたということのようだ。

l.p. は livre parisis の略。リーヴルは通貨単位。1リーヴルは20スー。1スーは12ドゥニエ。1リーヴルは240ドゥニエ。パン1個の値段が基本的に1ドゥニエ。

食べ物が産地によって差別化されていることはべつに驚くことでもないだろう。16世紀ラブレーの小説にも、バイヨンヌのハムとかボローニャのソーセージへの言及がある。

さて、Poulaillier プーライリエの原義は「鶏を飼育し、販売する業者」なのだが、エティエンヌ・ボワローの政令によると、

Item, nul quelqu’il soit ne pourra acheter pour revendre poulaille, eufz, fromaiges, perdris, cognins, aigneaulx, chevreaulx, veaulx, sauvagines, ne autres vivres quelzconques, en la ville de Paris, s’ilz ne les achetent es places publicques et lieux ou les marchiez sont, et ont acoustumé a estre, et en plain marchié ; et ne les pourront les poulaillers ou regratiers acheter pour revendre, en la ville de Paris, se n’est après l’eure de midi sonnée a Nostre Dame de Paris (Mét. corp. Paris L., t.1, 1351, 21).

ということなので、鶏のほか、卵、チーズ、|山うずら《ペルドリ》、兎、仔羊、仔山羊、仔牛、野生の鳥獣も扱っていたようだ。