Carotte nantaise と言ったって、Nantes (ナント)という系統の品種であるにすぎず、にんじんであることに変わりはない。ただ、日本で一般的なの五寸にんじんとは風味がちがう。キャロットラペにするだけでちがいがわかる。
フォンをとったりミルポワ、マティニョンに使うのもこういうタイプのほうがいいはずで、甘さばかり強調された日本のモダンなにんじんでは具合が悪かろう。もっとも僕は肉、魚をあまり食べないから自分でフォンをとることもなく、料理書を読んでいて漫然とそう思うだけなのだが。
昔のフランス料理の本では、香味野菜は裏方にとどまり、表舞台つまり皿のうえにはしゃしゃり出てこないことも多いが、香味野菜というのは着物の裏地のようなものだと思う。見えないところこそあえてこだわる価値がある。