p.XIX(4)=p.XX(1)

ヴェラール版の第一部は紙片a2〜h4までである1。内容は、肉、野菜、果物、飲み物について述べた食餌療法論だ。ラ・シェネはレシピをひとつも書いていない。食べ物が人間の身体に及ぼす影響について論じている。ちなみに、「人の身体を統べるもの」では惑星の動きが及ぼす影響について述べている。ミルク2は「重要な物質であり、とても良い食べ物」であり、「生のバターはあらゆる毒に対して解毒作用がある」。卵白は「消化に悪く」、卵黄は「心臓の働きを驚くほど強くする」。砂糖には「緩下作用と清浄作用がある」。「塩漬肉を継続的に摂れば、おねしょに良く効く」。動物の目は「よく肥った獣の、柔らかく脂に覆われたものなら冷たくて湿っているので、とてもいい食材だ」。チーズは「食後に少量食べるのであれば、胃の噴門を強くし、活発化させる」。まるでガレノス3の著書を読んでいるみたいではないか?

p.XX(2)

かくも自信たっぷりに食餌療法について書いてあるため、ジャコブという有名な愛書家、雑文家は、ラ・シェネが医者だったのだろうと考えた。この本に書かれている学術的内容がそっくり古代ギリシア・ローマの文献からの借用だということに、ジャコブは気づかなかったのだろう【原注1】。実際のところラ・シェネは法学者だった。さて、この本が同時代の美食家たちに長期にわたって影響を与えたということは注意しておきたい。1561年、ヴァンサン・セルトゥナス書店がこの本の第一部と第二部を再版している。その時の題名は『食餌療法と身体の健康維持…古代および現代の良著による選集』。今度は「古代」の語がタイトルに忘れずに入っている。ちなみに、匿名の法学者4は「現代の著者達」と複数形になっている!

【原注1】フランス語で適当な訳語がわからない場合、ラ・シェネはそのままラテン語で書いている。inula (aunée)5eruca (roquette)6など。一方、matianumという語は “pomme d’ache” と訳している。これはローマ人が好んだりんごの一種だというのだが、我々フランス人にはどのようなものかよくわからない。


  1. ページが通常の通し番号にはなっていない。 

  2. 牛乳、アーモンドミルク。 

  3. ローマ帝国時代のギリシアの医学者。 

  4. ラ・シェネのこと。 

  5. グランドネ。根を薬用とするキク科の植物。 

  6. ルーコラ。