前回のつづき)

Emilie TUZ, L’apparition des restaurants de luxe dans les alpes-maritimes (1860-1914). (エミリー・テュス『アルプマリティム地域圏における高級レストランの誕生』)という、ニース大学に提出された(らしい)メトリーズ(修士)論文の要約PDFファイルを見ると、1900年ごろのニースの料理人の月給は45フランくらいからだったと繰り返し書かれている。

メトリーズ課程だからだろうか、残念なことにタイトルページに提出大学名も年月日もなければ、合否の結果も書かれていない。とはいえとてもよく調べてあって、基本的な文献もしっかり押さえてあるから参考にするには充分だろう。

当時の若い料理人の下宿の家賃が18〜20フランつまり月給の半分ちかくだったこととか、ある料理人の給与明細を13年にわたって調べると月給45フランからスタートして、13年後には225フランまで昇給していたという夢のような出世のケースまで描かれている。

さて、エスコフィエである。『料理の手引き』初版から第三版の価格12フランとコミ(ヒラの料理人)のスタート時の月給45フランで比べてみると、この本が月給の2割弱(17.8%)だったことがわかる。

エスコフィエのいう「若い料理人諸君に買える価格」とはいちばん下っぱの料理人の月給の2割ということだ。これについていろんな意見はあるだろうが、いくつもの超高級ホテルを統括する総料理長の感覚が街場の若い料理人と違っても仕方あるまい。

飲食業界関係の方ならいまの日本の場合と比較してどうなのか即座にわかるだろう。それから、前回書いた「賃金ベースだと1フラン=5,000〜6,000円」というのもそれなりに妥当な数字と納得できると思う。そんなこともあってこの記事でも具体的に書こうかと飲食関係の求人情報をいくつか見たのだが、知人の店が上の方でヒットしたのでやめておくことにした。興味があったらググって計算してみていただきたい。(つづく)

新訳 エスコフィエ『料理の手引き』電子書籍についてはこちら

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