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憶測はこのくらいにしておこう。確かなことは、ピドゥが先人達のレシピを多少なりとも進化させ、よりわかりやすいものにしようとしたことだ。バターではなく牛脂あるいは去勢鶏の脂を用い、バターはクレーム・ウスュを作るのにしか用いられていない。塩はほとんど使われていないが、ちょうざめ、ジャコバン風スープ、去勢鶏のロースト、ソース・ド・トライゾンには「大量の」香辛料と砂糖が使われる。パンは重要な役割を果していて、生のパンの身を細かく刻んだ肉に混ぜ込んだり、焼いてから牛のブイヨンや、ヴェルジュを加えた「真紅のワイン」に浸して使う。野菜料理のレシピはほとんどない。その代り、菓子のレシピは多く、ダリオル1、タルムーズ2、ジャコバン風タルト(卵黄を混ぜ込み、通常はオレンジの香りづけをした生地でフロマージュ・グラ3を包んだ焼き菓子)のように、17世紀になってもポピュラーなものもあった。ウブロワイエ4はこれらの菓子と、ウブリ、エショデ、カス・ミュゾ、プティ・シューなどを籠いっぱいに積み上げ、通りを売り歩いていた。


  1. 比較的小さな円筒形の型にパイ生地を入れて焼く、クリームやチーズ入りの焼き菓子 

  2. フランの一種 

  3. フロマージュ・ブランに似たフレッシュチーズの一種 

  4. ウブリ(oublie ゴーフルの一種)をはじめとした焼き菓子を製造販売する職人 

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