アルトゥージを読め

ある料理雑誌のイタリア料理特集号の表紙に掲げられた一文。

La cucina è una bricconcella; spesso e volentieri fa disperare, ma dà anche piacere, perché quelle volte che riuscite o che avete superata una difficoltà, provate compiacimento e cantate vittoria.

料理は小悪魔のようなものだ。しばしば失望させられるが、喜びを与えてもくれる。あなたがたは、上手く料理できれば、あるいは、困難を乗り越えられれば、嬉しくなって凱歌をあげることだろう1

ペッレグリーノ・アルトゥージ(1820〜1911)の著書『料理学』 La Scienza in cucina e l’Arte di mangiar bene  (1891) 序文の言葉だ。

イタリアの食文化を識るための最重要文献のひとつなのだが、残念なことに日本ではあまり読まれていないようだ。『リチェッテ・レジョナーリ』は多少なりとも読んだことがあっても、アルトゥージは名前さえ知らぬというコックさんもいるだろう。

『リチェッテ・レジョナーリ』はイタリア食文化の多様性を学ぶことのできる書物だ。これに対して、アルトゥージ『料理学』は地域によって多種多様なイタリアの食文化が単なる無秩序で雑多な集合ではなく、いわば「イタリア料理らしさ」を持っていることの根源にある本だ。多様性と統一性、ともすれば相反するような性質だが、片方ばかり見ていては具合が悪かろう。

ついでに言うと、パスタがメインディッシュの前に供されるという慣習がどのようにして成立したか、この本を読んでいくらか考えれば理解できると思う(基本的にはレシピの羅列だから、考えなければわからないだろうが)。

また、この本を読んでフランス料理との関係を考えるのも面白いだろう。なにしろ、鶏のマレンゴとかバロティーヌ、クネルなどもあたりまえのごとく収録されている。

そのようなわけで、アルトゥージの重要性について滔々と説くべきなのだろうが、正直なところ僕にはそこまでの元気もないので、リンクをふたつ張っておく(いずれもPDF)。

原書に挑戦してみるのであれば、廉価版もいろいろあり、アマゾンイタリアあたりから簡単に買えるだろう。真剣に読むのであればEinaudi版をお薦めする。


  1. 目次ページにある日本語ほぼそのままだが、編集部からの求めで僕が大意訳をつけたものなのだから、ここで再録しても問題なかろう。