ラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』のこと

ラ・ヴァレーヌのラグゥのレシピを少しずつこのブログにアップしているが、ラ・ヴァレーヌについての基礎知識を書いていなかったことに気づいた。

フランソワ・ピエール・ド・ラ・ヴァレーヌ François Pierre de la Varenne (1618-1678)、日本ではラ・ヴァレンヌと表記することもある。17世紀の偉大なシェフ。『フランス料理の本』Le Cuisinier François (1651年)の著者。タイトルの François は Français の古い綴り。著者の名前フランソワではない。

『フランス料理の本』は『フランスの料理人』と訳されることも多いが、そもそもこの本はレシピ集である。料理人の何たるかを書いた本でもなければ、料理人の伝記や小説の類でもない。だから「料理人」という日本語タイトルでは内容に即したものとは言えない。それに、cuisinier という語にはストレートに「料理の本」という意味がある1。だから僕は『フランス料理の本』と表記することにしている。

この本の特徴は

  • 料理書ではじめてラグゥ ragoût という語を用いた
  • デュクセルの初出
  • アントルメとして野菜料理を収録した
  • とろみ付けにパンではなく小麦粉を使うようになる。ルゥの原型と見做せるものもいくつかある

などなど。何しろギヨーム・ティレル(タイユヴァン)の『ル・ヴィアンディエ』(14世紀後半)以来の料理人による料理書である。15、16世紀にはフランス語で料理人が書いた料理書は刊行されていない(少なくともその存在が伝えられていない)。料理書の歴史には200年以上も空白があるわけだから、文字通り「画期的」な本だ。

17世紀は絶対王政の時代であり、アカデミー・フランセーズによってフランス語の語彙・文法が整理、純化された。これには「言語をコントロールすることによって王権を強化する」意味合いもあった。一見、料理と何の関係もないことのようだが、王権の強化によってフランスという国家が強く意識されるようになったことと、ラ・ヴァレーヌの本がタイトルに「フランス」と掲げていることは無関係ではない。それまでの(中世)フランス語で書かれた料理書には「フランス」という国家あるいはその文化という概念、意識は認められない。これに対し、17世紀ラ・ヴァレーヌの本はタイトルから「フランス」と謳っている。(料理書は「実用書」だから当然といえば当然なのだが、だからこそ無意識的ともいえる概念の表象は意義深い)。

ラ・ヴァレーヌ『フランス料理の本』の「出版者による序文」にはこうある。

われらがフランスは、作法や礼節、いろいろな交際術において世界の他のどんな国よりも勝っているという名誉を得ているのだから、教養やマナーに秀でて品のよい生活様式についても同じように高く評価されているのだ。

ことさらに他国に対する優位性を料理という分野においても誇示している。フランス料理こそがもっとも優れた食文化であるという考えの原型と言えよう。この傾向は18世紀のマラン、19世紀のカレーム、20世紀のエスコフィエにも共通のものだ。フランス文化における「中華思想」のヴァリエーションのひとつであるが、その嚆矢と見て差し支えあるまい。少なくとも、著者その人ではなく「出版者」が書いたということを差し引いても、この本における「フランス料理」という概念の萌芽を示すものと言えるだろう。

話は逸れるが、フランス料理こそもっとも優れている、という考え方は日本のフランス料理関係者のあいだにも少なからずあるようだ。

客観的に見たら、フランスの食文化も、さまざまな地域文化のうちのひとつであり、どれが優れていてどれが劣っているなどということはあり得ない。そもそも、文化において優劣を決めようとするのは単一の価値観の押し付けにすぎず、他者を尊重することなど出来ない偏狭な考え方だ。

その一方で、「フランス料理の時代は終わった」とばかりにスペイン、北欧、ベネルクス、南米などとガスロトノミーの「最先端」を後追いし、皮相的な模倣ばかりする傾向も日本のフランス料理にはあるようだ。けれども、19世紀以降多くの国におけるガストロノミーがフランス料理をベースに発展したという歴史的事実を否定することは出来ない。そして、多くのガストロノミーのベースとなっているフランス料理が主としてエスコフィエの「体系」にもとづくものであり、エスコフィエの「体系」がフランス料理の長きにわたる歴史に根ざしたものであることも忘れてはいけない。

だからこそ、ラ・ヴァレーヌをはじめとする古い料理書を読む意義があるわけだが、日本のフランス料理あるいはガストロノミーがそういった問題意識を持つのはいつのことだろうか。

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(7)

37. 豚のラグゥ仕立て Cochon en ragoût

豚を掃除をする。皮は剥いてもいい。4つに切り分け、小麦粉をまぶす。フライパンで表面を焼き、味付けする。ケイパー、トリュフ、マッシュルームを加える。ソースは煮つめる。
Après l’avoir habillé, levez en la peau si vous voulez, puis le coupez en quatre, le farinez, passez par la poêle, bien assaisonné au goût: garnissez le de câpres, truffes, champignons, et servez à sauce courte.

おそらくは仔豚を用いると思われる。

このレシピには「ブイヨンを加えて煮る」という記述が欠落している。このような記述の漏れは珍しくないので注意が必要。

38. 仔牛腰肉のラグゥ仕立て Longe de veau en ragoût

よく叩き、棒状に切った豚背脂をラルデ針で縦に刺す。串を刺してローストする。半ば火が通ったら、鍋に移してブイヨンを注ぎ、弱火で煮込む。小麦粉と炒めた玉ねぎを加えて煮汁(ソース)にとろみを付ける。マッシュルーム、アーティチョーク、アスパラガス、トリュフ、適当に切った仔牛の腎臓を添える。
Etant bien battue, lardez la de gros lard et l’embrochez, puis étant à moitié cuite mettez la mitonner avec bon bouillon, et faites une sauce liée avec farine et oignon passé. Garnissez de champignons, artichaux, asperges, truffes, et le rognon découpé: servez.

ここで訳出した2つに共通する点として、主素材以外の具材を加えるのを garnir (添える)という動詞で表現していることがある。つまり主素材以外の具材を「ガルニチュール」と捉えていると考えられる。仕上げの段階で加えていることから、それぞれの具材は適切な下処理、調理をしておく必要があるだろう。

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(6)

34. 鵞鳥のラグゥ仕立て Oie en ragoût

鵞鳥1羽は4つに切り分け、よく叩く。小麦粉をまぶしてフライパンで表面を焼く。ブイヨンで煮て、各種香辛料とブーケガルニを加えて味付けする。鵞鳥のレバー、砂肝、手羽、頸づるを加える。ソースをよく煮つめてとろみが付くようにする。
Prenez une oie, la coupez en quatre étant bien battue, la farinez et faites passer par la poêle, puis la faites cuire avec du bouillon, l’assaisonnez de toute sorte d’épice et d’un bouquet. La garnissez de tous ses abatis, qui sont foie, gésier, ailes, et col: que la sauce soit courte et liée, puis servez.

35. サルセル鴨のラグゥ仕立て Sarcelles en ragoût

サルセル鴨を掃除して形を整えたら、薄切りにした背脂で包む。フライパンで表面を焼く。(鍋に移し、)しっかりと味付けをしたブイヨンを注いで弱火で煮る。豚背脂少々、小麦粉少々、玉ねぎ、ケイパー、マッシュルーム、トリュフ、ピスタチオ、レモンの外皮を加える。
Etant habillées bardez les de moyen lard, les passez par la poêle et les faites mitonner avec bouillon bien assaisonné, puis les passez avec un peu de lard et de farine, oignon, câpres, champignons, truffes, pistaches, et écorce de citron tous ensemble, puis servez.

Moyen lard は古い料理書で見かける表現。gros lard は赤身をほとんど含まない脂身で、もっぱら背脂のこと。petit lard, lard maigre はいわゆる豚ばら(三枚肉)で、脂身と赤身からなる。通常は塩漬けにしたものを使う。moyen lard はその中間、やや赤身の混ざった脂身と解釈されるが、実際上は背脂または豚ばらの脂身と捉えていいだろう。

明示的に書かれていないが、既に見てきたレシピから、豚背脂は叩いたもの、玉ねぎはすり潰したものを加えると解釈されよう。

36. 七面鳥のラグゥ仕立て Poulet d’Inde en ragoût

七面鳥を開いて叩く。拍子木に切った背脂をピケ針で刺してもよい。小麦粉をまぶしてフライパンで表面を焼く。陶製の鍋に移してブイヨンを注ぎ、弱火で煮る。味付けし、好みの食材をガルニチュールとして加える。ソースを充分に煮つめる。
Fendez le et battez, puis le piquez si voulez de gros lard, le farinez et passez par la poêle; le mettez ensuite mitonner dans une terrine avec bon bouillon, bien assaisonné et garni de ce que vous voudrez. Faites le cuire jusqu’à sauce courte, et servez.

七面鳥は現代フランス語では dinde (ダンド)だが、古くは poule d’Inde (プゥル・ダンド)あるいは poulet d’Inde (プゥレ・ダンド)と呼ばれた。いずれも「インドの鶏」の意。アメリカ大陸原産だが16世紀にはスペイン経由でフランスにもたらされ、家禽として飼育されるようになった。Dinde という表現はオリヴィエ・ド・セール『農業経営』(1600年)で既に見られるが、17世紀を通じて poulet d’Inde と書かれることが多かったようだ。

ところで、「好みの食材をガルニチュールとして加える」とは、レシピの表現としては乱暴だが、鵞鳥のラグゥ仕立てと同様にレバー、砂肝、手羽など、あるいはマッシュルームやトリュフ、ケイパーなどを加えるということだろう。

ピエール・ド・リューヌのラグゥ(1)

17世紀の料理書というとラ・ヴァレーヌばかりが有名だが、ほぼ同時期のピエール・ド・リューヌ『料理の本』(1656年)も無視出来ない重要なものだ。フランス食文化史の観点からばかりではなく、現代の料理シーンで古典をどう活かすかという点で、とても示唆に富んだ書物と言える。

この本はロアン公爵に仕えた料理長が書いたものと言われている1。「月の石」を意味するピエール・ド・リューヌ Pierre de Lune という名前が本名かどうかはわからないが、1660年には『新・料理の本』、1662年には『完全版メートルドテルのための本』がピエール・ド・リューヌ名義で出版されている。後者は貴族の城館などで行なわれる宴席の総責任者であるメートルドテルの主たる仕事内容、つまり献立と食卓の配置などについての本だが、「スペイン風料理」と題したレシピ集も収録されている。

さて、ピエール・ド・リューヌ『料理の本』はどのレシピもきわめて興味深いものだが、さしあたりラグゥの名称が付いているものについて見ていこうと思う。

仔羊のラグゥ

仔羊は4つに切り分け、棒状に切った背脂をラルデ針で刺し込む。軽く焼き色を付ける。これを陶製の鍋に入れてブイヨンを注ぎ、塩、こしょう、ブーケガルニ、クローブ、マッシュルームを加えて味付けする。火が通ったら、フライパンで炒めた牡蠣、小麦粉少々、アンチョヴィ2尾、レモン汁を加える。薄切りにして色よく炒めたマッシュルームを添える。
Mettez-le en quatre quartiers, le lardez de moyen lard et lui donnez un peu de couleur; le mettez dans une terrine avec bouillon assaisonné de sel, poivre, un paquet, clous, champignons, et quand il sera cuit passez huîtres par la poêle, un peu de farine, deux anchois, jus de citron et par tranche, garni de champignons frits.

肉をブイヨンで煮る前に焼くわけだが、原文は「軽く色を付ける」としか書いていない。4つに切り分けた仔羊それぞれに串を刺してローストするというのは考えにくいので、大きなフライパンに油脂を熱して表面を焼くと解釈していいだろう。

ラ・ヴァレーヌの「仔羊のラグゥ仕立て」と比べると、とろみ付けに小麦粉を使う点は同じだが、ここでは牡蠣とアンチョヴィを合わせているのが興味深い。古い料理書では肉料理に牡蠣を合わせるケースがしばしば見られるが、これもそのひとつ。


  1. Gilles et Laurence Laurendon, «Préface» à L’art de la cuisine française au XVIIe siècle, Payot, 1995, p.XII. 

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(5)

25. 仔羊のラグゥ仕立て Agneau en ragoût

仔羊をローストし、陶製の鍋に入れてブイヨン少々とヴィネガー、塩、こしょう、クローブ、ブーケガルニ、炒めた小麦粉少々、すり潰した玉ねぎ少々、ケイパー、マッシュルーム、レモンかオレンジの外皮を加える。弱火で煮込む。
Faites le rôtir, puis le mettez dans une terrine avec un peu de bouillon, vinaigre, sel, poivre, clou, et un bouquet, peu de farine passée, peu d’oignon pilé, câpres, champignons, écorce de citron, ou d’orange, et le tout bien mitonné ensemble, servez.

26. 仔牛上ばら肉のラグゥ仕立て Haut côté de veau en ragoût

上ばら肉は肋骨ごとに切り離す。小麦粉をまぶして、豚背脂を熱したフライパンで焼く。これを鍋に入れ、ブイヨン少々、ケイパー、アスパラガス、トリュフを加える。弱火でよく煮込む。
Coupez le par côtes, les farinez, et les passez par la poêle avec du lard, puis les empotez, et les faites cuire avec peu de bouillon, câpres, asperges, truffes, et le tout bien mitonné, servez.

1653年のパティスリ

Le Pastissier François (1653年初版)という本がある。現代の綴りに直すと Le Pâtissier français。内容を汲んでタイトルを訳すと『フランスのパティスリ』くらいになろうか。パティスリに特化した本としてはフランスでいちばん古いものだ。

著者名は記されていないが、「書誌」で有名なヴィケールはラ・ヴァレーヌではないかと推測している。その後新説も出ていないようで「ラ・ヴァレーヌ著(推定)」ということになっている。ただ、一読した印象では『フランス料理の本』と文体が異なるようにも思われる。

パティスリといっても、甘い菓子に限定されるわけではない。この時代、pâté (パテ)といえばもっぱら肉(および魚)を生地で包んで焼いたもののことを指す。

重要文献だが、原書の目次があまり役に立たないので、本文から項目名をメモ書きしておくことにする。参照した刊本には落丁があるため不完全。

第1章

  1. 灰褐色の生地 la manière de faire de la pâte bise (p.1)
  2. 大きなパテ用の白い生地 Pâte blanche pour faire de gros pâtés (p.2)
  3. きめ細かな白い生地…小さなパテやその他温製パテ、タルト、トゥルト、タルムーズその他のパティスリ用 La manière de faire de la pâte blanche fine, pour servir à faire des pâtés d’assiette, et autres que l’on mange chauds; et la croûte des tartes, des tourtes, talmouses, et autres pâtisseries (p.4)
  4. 折込み生地 Pâte feuilletée (p.5)
  5. 植物油を使う生地 Pâte à l’huile, et le moyen de lui en ôter l’odeur (p.8)
  6. 甘い生地 Pâte de sucre (p.9)

第2章

  1. パティスリで使う甘いエピス La manière de faire de l’épice douce des Pâtissiers (p.10)
  2. 塩入りのエピス (p.11)

第3章

  1. ドリュール La manière de faire de la dorure des Pâtissiers pour donner couleur à la pâtisserie (p.11)

第4章

  1. クレーム・パティシエール La manière de faire de la Crème de Pâtissier (p.13)
  2. より繊細なクリーム Crème qui est plus fine (p.14)
  3. 四旬節のクリーム Crème pour le Carême (p.16)

第5章

  1. 砂糖のグラス La manière de faire de la glace de sucre (p.17)

第6章

  1. パティスリ全般についての注意 Avis généraux pour le fait de la Pâtisserie (p.18)

第7章

  1. ハムのパテ La manière de mettre un jambon en pâte (p.20)
  2. バスク風パテ La manière de faire un pâté à la Basque (p.23)
  3. ハムのパテ トルコ風 Pâté de jambon à la Turque (p.28)
  4. 鹿肉、猪肉、ダマシカ肉などの大きな肉や、仔牛、牛、羊の腿肉のパテ。野うさぎ、家うさぎ、鵞鳥、七面鳥、鴨、山うずら、老鳩などの大きな鶏のパテ La manière de mettre en pâte de la chair de cerf, ou de sanglier, ou de daim, ou de quelque autre viande grossière, comme une rouelle de veau, une tranche de boeuf, ou un membre de mouton. Comme aussi la manière de faire un pâté de lièvre, de lapin, d’oie, de volaille d’inde, de canards, de perdrix, de pigeons vieux, et autres gros oiseaux (p.30)
  5. パテ・ロワイヤル 温製 Faire un pâté Royau pour être mangé chaud (p.37)
  6. 去勢鶏、仔牛胸肉、仔鳩、ひばりなどの温製パテとトゥルト Faire un pâté, et une tourte de chapon, de poitrine de veau, de pigeonneaux, d’alouettes, et autres, pour les manger chauds (p.40)
  7. パテ 甘いソース Faire un pâté à la sauce douce (p.43)
  8. 小さなパテ Faire un pâté d’assiette (p.44)
  9. ゴディヴォのパテ Faire un pâté de godiveau (p.47)
  10. ベアティーユのパテ Un Pâté de Beatilles (p.49)
  11. ベアティーユのトゥルト La manière de faire une tourte de beatilles (p.50)
  12. 挽肉のトゥルト Autre manière de faire une tourte de viande hachée (p.50)
  13. 枢機卿風パテ Pâté à la Cardinale (p.51)
  14. イギリス風パテ Un pâté à l’Anglaise (p.52)
  15. スイス風パテ Un Pâté à la Suisse (p.56)
  16. パテ・ド・ルケット Un Pâté de Requête (p.57)
  17. 折込み生地で作るイタリア風小さなパテ Pâté d’assiette à l’Italienne en pâte feuilletée (p.59)
  18. スペイン風小さなパテ Faire des petits pâtés à l’Espagnole (p.61)
  19. 小さなパテ 公女風 Faire des petits pâtés à la Princesse (p.62)
  20. 鯉などの魚のパテ 冷製 Faire un pâté en venaison de carpe ou d’autre poisson, pour manger froid (p.63)
  21. 魚のすり身のパテ Faire de chair de poisson désossée et hachée (p.71)
  22. La manière de désosser le poisson, et de préparer un bon hachis de poisson pour en garnir des pâtés (p.73)
  23. 魚のすり身の小さなパテ Faire des petits pâtés à l’huile avec du hachis de poisson (p.77)

第8章

  1. パン・ベニ (祝別されたパン、ブリオシュ) La manière de faire un pain bénit (p.78)
  2. 上品なパン・ベニ、クゥザン、シャントー Un pain bénit fin et plus délicat, lequel on appelle à Paris du cousin; et en d’autres endroits on le nomme un chanteau (p.81)

第9章

  1. クレーム・パティシエールのトゥルト La manière de faire une tourte à la crème de Pâtissier (p.83)
  2. クリームのトゥルト Autre tourte à la crème très délicate (p.86)
  3. 牛骨髄のトゥルト Une tourte de moelle de boeuf (p.87)
  4. 豚背脂のトゥルト Une tourte au lard (p.88)
  5. 仔牛ケンネ脂のトゥルト Une tourte de rognon de veau (p.89)
  6. 卵のトゥルト Une tourte aux oeufs (p.90)
  7. 葉菜のトゥルト Une tourte d’herbes (p.91)
  8. 根菜のトゥルト Une tourte de racines (p.94)
  9. 果物のトゥルト Une tourte de fruit cru (p.95)
  10. かぼちゃのトゥルト Une tourte de chair de citrouille, ou de courge, ou de melon (97)
  11. りんごのトゥルト Une tourte avec de la chair de pommes (p.99)
  12. りんご、洋梨などの果物のトゥルト、パテ、ショソン Une tourte ou pâté, ou chausson de pommes ou de poires, ou d’autre fruit cru (p.100)
  13. ジャムのトゥルト Une tourte de confitures (p.101)
  14. ジャムのトゥルトと同様の作り方をするもの Autre tourte en façon de tourte aux confitures (p.102)
  15. フランジパーヌのトゥルト Une tourte de frangipane (p.103)

第10章

  1. フイヤンティーヌ La manière de faire une feuillentine (p.106)
  2. タルト La manière faire des tartes (p.108)

(p.128まで落丁)

第14章

  1. Un gâteau à la Dame Susanne (p.129)
  2. Gâteaux mollets au fromage (p.131)
  3. Un gâteau verollé (p.132)
  4. Un gâteau de Milan (p.134)
  5. Un gâteau aux amendes (p.135)
  6. Un gâteau feuilleté (p.137)

第15章

  1. La manière de faire des flamiches (p.138)

第16章

  1. La manière de faire un poupelain (p.140)

第17章

  1. La manière de raffiner du beurre (p.142)

第18章

  1. La manière de faire des petits choux (p.143)

第19章

  1. La manière de faire des gauffres au sucre (p.144)
  2. Gauffres au lait, ou à la crème (p.145)
  3. Gauffres au fromage fin (p.146)
  4. Autre manière de gauffres excellentes (p.148)

第20章

  1. La manière de faire de beignets ou boignettes (p.150)
  2. Autre façon de begnets que l’on appelle des Tourons (p.152)
  3. Autres beignets (p.154)

第21章

  1. La manière de faire des rissoles (p.154)
  2. Rissoles feuilletées plus délicates (p.155)

第22章

  1. La manière de faire des casse-museaux (p.157)
  2. Autres casse-museaux (p.158)

第23章

  1. La manière de faire des échaudés, ou craquelins au beurre (p.159)

第24章

  1. La manière de faire du biscuit commun des Pâtissiers (p.163)
  2. Du biscuit à la Reine (p.165)
  3. Du biscuit de Piedmont (p.166)
  4. Du biscuit de canelle (p.167)
  5. Des biscuits de sucre en neige (p.168)
  6. Du biscuit de pistaches (p.168)
  7. Du biscuit de Gamby (p.169)
  8. Du biscuit de Carême (p.169)

第25章

  1. La manière de faire du massepain commun (p.171)

(pp.174-175 落丁)

第27章

  1. La manière de faire des pains de citron (p.176)
  2. Autres Pains de Citron (p.177)

第28章

  1. Pâté aux oeufs (p.177)
  2. Pâté en Pot aux oeufs (p.178)
  3. Gâteau ou Tourte aux oeufs (p.179)
  4. Tourte d’oeufs aux Pommes (p.180)
  5. Oeuf fouettés en forme de gâteau ou poupelam (p.181)
  6. Oeuf en beignets (p.182) (pp.183-186 落丁)
  7. Herbolade (p.187)

第29章

  1. Diverses manières d’apprêter les oeufs perdus ou pochés, cuits en l’eau (p.188)

第30章

  1. Diverses manières d’apprêter les oeufs durs (p.192)

第31章

  1. Oeufs à la Portugaise (p.194)
  2. Oeufs durs farcis (p.195)
  3. Oeufs à l’oseille (p.197)

第32章 Diverses manière de faire les Omelettes

  1. Omelette simple (p.198)
  2. Omelette à la Célestine (p.199)
  3. Omelette cretonneuse (p.200)
  4. Omelette aux pommes (p.201)
  5. Omelette à la mode (p.202)
  6. Omelette à l’écorce de citron (p.203)
  7. Omelette au lard (p.203)
  8. Autre manière (p.204)
  9. Omelette à la crème (p.204)
  10. Autre omelette à la crème (p.205)
  11. Omelette aux herbes (p.205)
  12. Omelette au persil (p.206)
  13. Omelette à la ciboulette (p.207)
  14. Omelette farcie avec chicorée (p.207)
  15. Omelette au fromage (p.208)
  16. Omelette aux concombres (p.208)
  17. Omelette à la Turque (p.210)
  18. Omelette au rognon de veau (p.211)
  19. Omelette ou tourte aux oeufs, et hachis de poisson (p.212)
  20. Omelette à la farce (p.213)
  21. Omelette aux asperges (p.213)
  22. Omelette au pain, ou ratton (p.214)
  23. Oeufs au miroir (p.216)
  24. Oeufs au beurre noix (p.217)
  25. Oeuf au lait (p.217)

第33章 Diverses manières de Marmelades

  1. Marmelade ou Oeufs brouillés au verjus, sans beurre (p.219)
  2. Oeufs brouillés au verjus avec beurre (p.220)
  3. Oeufs brouillés au verjus de grain (p.221)
  4. Oeufs brouillés avec bouillon de viande (p.222)
  5. Oeufs brouillés à la Crème (p.223)
  6. Oeufs brouillés au fromage (p.223)
  7. Oeufs brouillés avec chicorée (p.224)(pp.225-226 落丁)
  8. Autre Marmelade, ou oeufs brouillés (p.227)
  9. Oeufs brouillé aux amandes (p.228)
  10. Autre oeufs brouillés (p.229)
  11. Oeufs à la Polonaise (p.230)
  12. Oeufs mignons (p.231)
  13. Oeufs à la huguenote (p.232)

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(4)

20. 羊尾肉のラグゥ仕立て Queue de mouton en ragoût

羊尾肉は腿付きのものを使う。棒状に切った背脂をラルデ針で全体に刺し、牛塊肉1とともに茹でる。半ば火が通ったら鍋から取り出し、小麦粉をまぶしてフライパンで焼く。陶製の鍋に移してブイヨンを注ぐ。マッシュルーム2、ケイパー、牛口蓋肉3を加えて味付けをし、蓋をしてよく煮る。
Prenez-la jointe au membre, lardez la toute de gros lard, et la mettez cuire avec une pièce de boeuf; lorsqu’elle sera à moitié cuite tirez la, l’enfarinez et la passez par la poêle, puis la mettez dans une terrine avec bon bouillon, et l’assaisonnez bien de champignons, câpres, palais de boeuf, et couvrez, et la laissez bien cuire, puis servez.

「尾肉」と書いてあるが実際にはバロン(baron, 両腿の付いた後半身肉)にほぼ相当すると考えていいだろう。ただ、バロンは鞍下肉を含むが、ここでの「尾肉」が同様かはわからない。


  1. pièce de boeuf イチボなどの大きな塊肉 
  2. 日本語で一般にマッシュルームと呼ばれるツクリタケ champignon de Paris, champignon de couche はこの本が書かれた17世紀中頃に栽培がはじまった。 
  3. 「白いアバ」に分類され、17、18世紀にはよく料理に用いられた。水によくさらして血抜きをし、下茹でしてから煮込みなどにする。 

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(3)

18. 豚舌肉のラグゥ仕立て Langue de porc en ragoût

生の豚舌肉を使う。フライパンで表面を焼き、よく煮る。しっかり味付けする。ほぼ火が通ったら、(煮汁から豚舌肉を取り出して、)すり潰した玉ねぎ、小麦粉、白ワイン少々とともにもう一度フライパンで焼く。これを先の煮汁に戻して弱火で煮込む。
Prenez les fraîches1 et les passez par la poêle, puis les faites bien cuire et asaisonner de haut goût, étant presque cuites vous les repasserez avec oignon pilé, truffes, farine sèche et un peu de vin blanc, et les faites mitonner dans leur même bouillon, et étant cuites servez.

19. 羊舌肉のラグゥ仕立て Langue de mouton en ragoût

羊舌肉は数本用意する。よく茹でた後、小麦粉をまぶしてフライパンで表面を焼く。鍋に移してブイヨンを注ぎ、弱火で煮込む。玉ねぎ少々、トリュフ、パセリを加え、味付けする。ヴェルジュ少々とヴィネガー少々で仕上げる。
Prenez en plusieurs, et étant bien cuites farinez les et passez par la poêle, faites les mitonner avec bon bouillon, et y passez2 peu3 d’oignon, champignons, truffes, persil ensemble, le tout bien assaisonné, avec un filet de verjus et de vinaigre, puis servez.


  1. 塩漬けなどの加工肉ではない、生の豚舌肉ということ。 
  2. passer 古い料理書では「炒める、焼く」の意味で用いられることも多いが、本来この語にはそのような意味はない。道具、手段などが明示されることで「それによって作業する」ということ。ここでは「加える」程度に解釈。 
  3. peu de 現代フランス語では「ほとんどない」の意だが、17世紀には「少量の」。 

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(2)

17. 牛舌肉のラグゥ仕立て Langue de boeuf en ragoût

牛舌肉に、長い棒状に切った背脂をラルデ針で縦に刺し込む。鍋で茹でる。しっかり味付けする。おおむね火が通ったら火から外して冷ます。拍子木に切った背脂を刺し、ロースト用の串を通す。煮汁をかけながら焼き上げる。串を抜いたら煮汁に戻し入れ、すり潰した玉ねぎ少々、背脂少々、ヴィネガー少々を加えて弱火で煮込む。
Lardez la de gros lard, puis l’empotez, faites cuire, et assaisonnez de haut goût. Lorsqu’elle sera presque cuite laissez la refroidir, piquez la, embrochez, et arrosez de son ragoût jusques à ce qu’elle soit rotie, et tirée faites la mitonner dans la sauce avec un peu d’oignon pilé, un peu de lard, et un peu de vinaigre, puis servez.

肉を下茹で→ロースト→煮る、というプロセスは中世の料理では珍しくなかった。その意味では、この「牛舌肉のラグゥ仕立て」はやや前時代風なのかも知れない。一方、中世で多用されていた香辛料がまったく使われていない点も面白い。

ローストする際に煮汁をかけながら(アロゼ)焼くわけだが、語学的な面では、その煮汁をラグゥ ragoût と呼んでいるのがとりわけ興味深い。さらにこの煮汁はソース sauce と言い換えられている。

ラグゥ ragoût は17世紀になってから用いられるようになった言葉で、語源的には「食欲をそそるもの」の意があるわけだが、ここでは既に、「ソースと具材が一体になった煮込み、およびその煮汁(ソース)」の意味で用いられていることが確認されるわけだ。

ラ・ヴァレーヌのラグゥ(1)

ラ・ヴァレーヌのラグゥをひとつずつ見ていくことにする。フランス語は現代の綴りにしたが、文法や語彙は原文のまま。注をつけておくので適宜参考にされたい。

16. 山うずらのラグゥ仕立て Perdrix en ragoût

Prenez vos perdrix1, habillez-les2, et les piquez3 de trois ou quatre lardons de gros lard4, puis les farinez5 et les passez6 dans la poêle avec lard ou saindoux; ensuite faites-les cuire dans une terrine, bien consommer7 et assaisonner. Lorsque vous voudrez servir prenez du lard et le battez dans un mortier, mêlez le dans votre ragoût8, et servez.
山うずらを掃除し、拍子木に切った背脂3〜4本を刺す。小麦粉をまぶし、背脂かラードを熱したフライパンで焼く。これを陶製の鍋に入れる。(ブイヨンを注いて火にかけ、)完全に火を通す。味付けする。背脂を鉢に入れて叩き、提供直前に混ぜ込む。


  1. 山うずらとちりめんキャベツ」参照。 
  2. habiller は「着せる」ではなく「身支度を整える」のイメージ。つまり余分な部分は切り落し、きれいに整形することなので、この1語で羽をむしり、首づるを落して内蔵を取り除き、必要に応じて腿を固定するという一連の下処理の作業を表している。ラ・ヴァレーヌ以前、つまり中世の料理書であればさらに「下茹でする」ところ。実際、ラ・ヴァレーヌでも肉を炒める(焼く)前に下茹でする指示がされているレシピもある。なお、ここでは「切り分ける」とは言っていないことに注意。また、ここで使用される山うずらが「複数」であることにも注意。 
  3. piquez-les 
  4. gros lard は豚背脂で赤身肉が付いていないものを言う。 
  5. farinez-les なお、素材に小麦粉をまぶしてから炒める、炒めてから鍋に小麦粉を振り入れる、別鍋に油脂を熱し小麦粉を炒めてから煮汁に加える、等の方法は17世紀以降に一般化した。 
  6. passez-les. passer は「漉す」ではなくこの場合は「フライパンで焼く」。ただしどの程度の火力を用いるか、焼き色を付けるかどうかは記されていない。 
  7. consommer は「完成させる」の意。また、煮るためには何らかの液体を注ぐわけだが、ここでは自明のこととして明記されていない。ラ・ヴァレーヌの他のレシピとの比較から、「ブイヨンを注ぐ」という指示が省略されていると考えるのが妥当だろう。また、「陶製の鍋」を用いることから、弱火でじっくり時間をかけて煮ることが推測される。さらに、この consommer「完成させる」が煮汁を煮つめることも含意している可能性に留意すること。 
  8. 現代なら、仕上げとしてバターを混ぜ込む(monter au beurre 日本語では「ブールモンテ」などと呼ぶことが多い)ところ。