p.XIX(3)

『健康のはこ』という匿名で著された本がある。匿名なので、デュ・ヴェルディエ1の書誌では、コメントなしに “Nef” の項に置かれている2。19世紀になってようやく、この本のプロローグ末尾にある18行詩の各行最初の文字が注目されるようになった。当時の慣習からいっても、この行頭の文字列は作者名のアクロスティシュ3である。作者の名はニコル・ド・ラ・シェネ4

tapisserie de Tournais_repas_de_Banquet.

p.XIX(4)

この本はルイ12世の時代に書かれたもので、3つの版が現存している。最初に出版されたのは1507年、アントワーヌ・ヴェラール書店。2番目は1511年、ミシェル・ル・ノワール書店。3番目は1520年ごろ、ジャン・トレプレル未亡人の書店から出版された。民法と教会法の教授が著者だとなっている。本は4部からなり、第一部は「健康の函」(散文)、第二部「人の身体を統べるもの」(散文と韻文)、第三部「宴会を断罪し、食の節制を称揚する」(登場人物が38人の教訓詩)、第四部「心の苦しみが健康に害をなすことについて」(散文)【原注1】

【原注1】パスカル・ピア『医師詩集』p.III 参照。


  1. 詩人、書誌学者。1544〜1600年。Wikipedia(日本語) 

  2. 書誌は通常、著者名のアルファベット順に配列される。 

  3. 行頭の文字を縦につなげて読むと意味のある語が表われる。いわゆる「縦読み」と同様のもの。 

  4. 15世紀末に活躍した文人。Wikipedia(フランス語) 

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