電子書籍版EPUBファイル販売中のエスコフィエ『料理の手引き』五島訳ですが、紙媒体つまり昔ながらの普通の本として出版の見込みが2022年11月19日現在、まったくありません。とても悲しいことですが、主要な料理関係の出版社 3 社からはすでに断られてしまっています。

恥ずかしながら友人との電話で、この事実をきちんとアナウンスしていなかったと気づかされました。あらためて、紙の本として出版する見通しが現状ゼロであることをご報告いたします。そして、僕の心理として積極的に紙の本を出版する活動を今後するつもりがないことをお伝えします。そのようなわけで、電子書籍版のご利用をお願いします。以下ちょっと長くなりますがその理由です。

電子書籍 EPUB ファイルを作成する過程で、このエスコフィエの稀代の名著はそもそも内部参照の多い構造と文章になっているから「理解できる」ものにするにはリンク機能をつかえる電子媒体が最適で、コストのやたらとかかる紙媒体は不要との思いをますます強くしました。

120 年前にハイパーテキスト構造を内在させているともいえる書物を執筆、構成したエスコフィエとその協力者たちの慧眼には敬服するほかありません。ただ、その結果として、『料理の手引き』は全体を理解していないとレシピのひとつも理解できない、ひとつひとつのレシピを理解していないと全体を理解できないという、読者にとってはまことに不都合な、難解な名著になってしまっています。この問題を解消、乗りこえるには紙の本の場合、何回も繰り返し、ていねいに読む、熟読するほかありません。

紙媒体の本はたしかに、電気がなくても光さえあれば読める、火事や水害がなければ保存性も高いといった利点があります。なにより紙の書物はヨーロッパで600年以上作られてきた、そしていまも現存するものがあるという実績、歴史があります。ただ、どうしようもない欠点もあります。どんなにていねいに扱っているつもりでも、何回も読んでいるとぼろぼろになってしまうんです。

僕の手元にある『料理の手引き』フランス語原書は2回崩壊して綴じ直しました。英訳第五版は崩壊はしてないですが見た目がかなりボロくなっています。ちなみに学生時代から常用している『ロワイヤル仏和中辞典』は4代目。ぼろぼろに崩壊して修理を繰り返し、それでも3回買い替えています。

モノは使っていればボロくなります。使ってなくても経年劣化します。そういうものにコストをかけて、しかもリスクを負うことはできません。頭を下げたくないです。なので僕自身は電子書籍版の販売は熱心にしますが、紙媒体出版についてはこれ以上何もするつもりはありません。できることはすでにしましたので。どうぞご理解ください。

電子書籍版エスコフィエ『料理の手引き』EPUBファイル