まったくの初心者がフランス語で書かれたレシピをすらすら読めるようになる連載(1)名詞と形容詞

これから数回に分けて、Le Journal des femmesというサイトの「ほうれんそうとスモークサーモンのキッシュ」を教材に、フランス語で書かれたレシピの読みかたを説明していく。

かなり長いし、一度読んだだけではなかなか頭にはいらないかも知れないが、ほんとうにフランス語で書かれたレシピを「すらすら読める」ようになりたいのであれば、繰り返し読むことを勧める。

レシピはふつう、材料と手順の2パートに分けて書かれている。まずは材料のところを見てみよう。

  • 1 pâte brisée
  • 3 oeufs
  • 10 cl de crème fraîche épaisse
  • 350 g d’épinards
  • 80 à 100 g de saumon fumé
  • 100 g ou plus de fromage râpé (type gruyère)
  • 2 cuillères à soupe de beurre
  • sel et poivre

名詞

名詞とは「ものの名前」「物事を表わす語」のことだ。レシピの場合は材料そのものということになる。

練習1

上の材料表から名詞を抜きだしてみよう。実際にやってみてから続きを読むこと。

pâte oeufs crème épinards saumon fromage type gruyère cuillères soupe beurre sel poivre

多少なりともフランス料理を知っているなら、pâte brisée, crème fraîche épaisse, saumon fumé, fromage などはすぐに意味がわかるだろう。いずれも「名詞+形容詞」でまとまった意味になっている。こういうのを名詞句という。名詞が核になった語のまとまりということだ。

さて、上のリストには材料そのものではない名詞も入っている。type, cuillères, soupe だ。これらも名詞句をつくっている。type (ティップ)は「タイプ」のことだ。

type +形容詞または名詞

のかたちで、「〜タイプ」の意味になる。つまり「グリュイエール・タイプ(のチーズ)」というわけだ。

また、cuillère (キュイエール)は「スプーン」のこと。 cuillère à soupe (キュイエールアスープ)という名詞句で「スープスプーン」つまり「大さじ」のことだ。「小さじ」は cuillère à café (キュイエールアカフェ)という。

男性名詞と女性名詞

フランス語の名詞には男性と女性の区別がある。人間や動物のように実際に性別のあるものはいいが、食材や調理器具、料理そのものといった性別などあり得ない名詞も男性、女性と区別する。まことに理不尽だが、料理フランス語を学ぶうえで最重要ポイントのひとつだ。ドイツ語などは中性名詞まであるから、それにくらべれば多少はましと思って覚えること。

練習2

上でリストアップした名詞を辞書で引いて、男性名詞か女性名詞を調べてみよう。ついでに読みかた(発音)と意味もメモしておこう。くどいようだが、実際にやってみてから、読みすすめること。

フランス語 読みかた 意味
pâte パート 生地、パート
oeuf ウフ(注意)
crème クレーム クリーム
épinard エピナール ほうれんそう
saumon ソモン サーモン
fromage フロマージュ チーズ
type ティップ タイプ
gruyère グリュイエール グリュイエールチーズ
cuillère キュイエール スプーン
soupe スープ スープ
beurre ブール バター
sel セル
poivre ポワーヴル こしょう

読みかた(発音)をカタカナで書くのにはいろんな流儀があって、書き手によって微妙に違うことがある。この表のカタカナが手持ちの辞書と違っていてもあまり気にしないこと。

表に(注意)と書いた oeuf の oe は、活字によっては œ となる。手で書くときはかならず o と e をつなげて書くことになっている。また、oeuf は単数形では「ウフ」と発音するが、複数形の場合は「ウー」となる。f を発音しなくなる例外的な単語だ。

単数形と複数形

男性名詞と女性名詞の表では、はじめにリストアップした名詞とすこしだけ違っているところがある。

épinard と cuillère だ。どちらも材料表では épinards, cuillères となっていた。つまり、最後に s が付いていた。この s がついたのは「複数形」だ。つまり、男性名詞と女性名詞の表はぜんぶ「単数形」になっている。

このように、名詞の最後に s を付けると複数形になる。この s は発音しない。文字で書いたときだけだ。

形容詞

形容詞とは、物事の性質を表わす言葉だ。が、はじめに見たように、名詞句をつくっていることも多い。

フランス語の形容詞は名詞の後に置くことがほとんどだ。

名詞 + 形容詞

この材料表では、brisée, fraîche, épaisse, fumé, râpé が形容詞だ。どれも名詞の後に置かれていて

pâte brisée

crème fraîche épaisse

saumon fumé

fromage râpé

となっている。

ここで大事なポイント。

フランス語の形容詞は、名詞に合わせて、男性形、女性形、単数形、複数形に変化する

つまり、男性単数、男性複数、女性単数、女性複数の4種類に変化するということだ。複数形は名詞と同様に最後に s を付けるだけで、その s も発音しないから、大した脅威ではない。

問題は女性形だ。上の4つの名詞句のうち、pâte brisée と crème fraîche épaisse は女性名詞が核になっている。だから brisée, fraîche, épaisse の3つの形容詞は女性形だ。

形容詞は辞書の見出し語の書き方に癖がある。

DSCN1215

画像は左が『プロのための フランス料理 仏和・和仏辞典』(柴田書店)、右が『ロワイヤル仏和中辞典』(旺文社)。丸で囲んだところが brisée の見出しだ。たいていの辞書はこういう表記になっている。これは、カンマの前までで男性単数形、カンマの後まで続けると女性単数形という意味だ。だから、

  単数 複数
男性 brisé brisés
女性 brisée brisées

ということになる。発音はどれも「ブリゼ」だ。たいていの形容詞はこのように、男性形に e を付けると女性形になる。さらにその後に s を付けると複数形だ。

すべての形容詞がこのパターンで変化するなら楽なのだが、そういうわけにもいかぬ。fraîche を辞書で引くと

DSCN1216

となっている。画像左の『プロのための フランス料理 仏和・和仏辞典』では、イタリック(斜字)になっているところのカンマまでが男性形の語尾、イタリックの右側が女性形という意味だ。これについては『ロワイヤル仏和中辞典』の表記のほうがわかりやすい。男性形が frais 女性形が fraîche ということだ。語学の苦手なひとの多い料理人むけの辞書のほうが、フランス語専門家むけの辞書よりわかりにくい表記になっているのはいささか残念な気もする。

いずれにしても、

  単数 複数
男性 frais frais
女性 fraîche fraîches

となる。発音は男性形(単数形も複数形も)が「フレ」、女性形(単数形も複数形も)が「フレッシュ」。

気づいただろうか? frais の複数形は frais のままだ。つまり、もともと単数形が s で終わっている単語の複数形はそのままでいい。

練習3

épaisse を辞書で調べて、上の表にならって男性形、女性形、単数形、複数形を書いてみよう。

DSCN1217

  単数 複数
男性 épais épais
女性 épaisse épaisses

発音は男性形が「エペ」女性形は「エペス」。

なかなか面倒だが、形容詞の表記のしかたは辞書によって違うので、辞書のはじめの「凡例」とか「本書の使い方」といったページをよく読んで理解することが重要だ。

次回は、おなじ材料表のなかから、数と量の表現について解説する予定。

より本格的に文法理解を深めたい場合は以下のリンク先(東京外国語大学言語モジュール)で学ぶといいだろう。スマートフォン対応だから便利だと思う。

名詞の性

名詞の複数形

形容詞の性・数

形容詞の位置


まったくの初心者がフランス語で書かれたレシピをすらすら読めるようになる連載(2)数と量の表現につづく