はやくも(5)だが、ようやく作業手順のパートの読みかたにはいったばかり。「ほうれんそうとスモークサーモンのキッシュ」を作れるようになるにはまだまだ先が長い。ちっとも「すらすら」じゃないではないか! と思うかも知れぬが、「すらすら読めるようになる」のは結果というか目標であって、そこに至る道のりではない。これでもかなり無駄を削ぎ落してシンプルにしているのだ。ためしに本屋に行って、フランス語の入門書を立ち読みしてみるといい。文法事項のあまりの多さにげんなりするにちがいない。

語学なんてつまるところ「慣れ」の問題だから、習得するいちばんのポイントは継続することだ。自分のペースでいいから、あせらず続けることだ。

さて、ふたたび作業手順全文を掲げておく。

  1. Préchauffer le four à 200°c. Dans un plat à tarte, mettre la pâte. (プレショフェルフールア200ドゥグレ ドンザンプラタタルト メットルラパート)
  2. Couper le saumon fumé en petits morceaux. (クペルソモンフュメオンプティットモルソー)
  3. Laver les épinards, puis faire les cuire avec le beurre. Les refroidir et les égoutter puis les hacher grossièrement. (ラヴェレゼピナール ピュイ フェールレキュイールアヴェクルブール レルフロワディール エ レゼグテ ピュイ レアシェグロスィエールモン)
  4. Dans un saladier, mélanger les oeufs, la crème fraîche et le fromage. Ajouter les épinards. Saler et poivrer. (ドンザンサラディエ メランジェレズー ラクレームフレッシュエルフロマージュ アジュテレゼピナール サレエポワヴレ)
  5. Verser le saumon fumé sur la pâte, puis la préparation, tout doucement. (ヴェルセルソモンフュメシュルラパート ピュイ ラプレパラスィヨン トゥドゥスモン)

Pour finir (プールフィニール)

  • Laisser cuire au four pendant 35 à 45 minutes selon le four. (レセキュイールオフールポンドン35ア45ミニュート スロンルフール)

文の構造をとらえる

前回見たように、レシピの文の基本構造はとてもシンプルだ。たいていの文はこの構造でできている。

20151001-a

ここで注意しておきたいのは、「どのように」には「どのくらいの時間 / どんな調理器具で / どのくらいの温度で」などいろいろな内容があるということ、そして位置が比較的自由だということ。だから「どんな調理器具で + 動作 + 何を」のような語順もあるわけだ。それが2つめの文

Dans un plat à tarte, mettre la pâte.

タルト皿(型)に + 置く + 生地を

となっている。

練習1

2行目の文、Couper le saumon fumé en petits morceaux. の構造を分析してみよう。

動作 何を どのように
Couper le saumon fumé en petits morceaux.
切る スモークサーモンを こま切れに

le, la, l’, les

le, la, l’, les はどれも l ではじまっているから、おなじような語だというのはわかるだろう。これらの語にはおもに2つの使いかたがある。名詞の前につける場合と、動詞の前につける場合だ。

  • le / la / l’ / les + 名詞
  • le / la / l’ / les + 動詞

名詞の前につける場合は定冠詞といって、「その」「すべての」「〜というもの」の意味になる。ただし、いちいち訳さないことが多い。文法書ではとても重要なもののように書いてあるし、フランス語の学習をすすめていくとたしかに重要度は増すのだが、初心者がレシピに挑戦するレベルであれば、その程度のものと考えていい。

  • le four
  • la pâte
  • le saumon fumé

動詞の前につける場合は「それ」「それら」の意味だ。前に出てきた名詞を「それ」と言いかえているわけだ。文法用語では直接目的補語人称代名詞という。こちらは訳したほうがいい場合もある。

faire, laisser

手順3の faire les cuire と、最後の laisser cuire はどちらも「火をとおす」「加熱する」の意味だ。前回見たように cuire だけで「煮る」「加熱する」「火をとおす」の意味だから、faire と laisser はなくてもよさそうなものだが、そう書いてあるケースは多い。

文法的には「使役・放任動詞」といって、なかなか高度なものだが、そういう熟語表現だと思って覚えてしまうほうがいいだろう。

あえて言うなら、faire と書いてあるほうは積極的な動作をともなっていて、laisser のほうは「放っておく」ニュアンス。

ほかに、

などがある。

faire / laisser と「それ(ら)を」

faire les cuire の例がそうだが、faire 〜 / laisser 〜 と「それ(ら)を」を意味する le, la, l’, les を組みあわせる場合は、間にはさまる格好になる。もうひとつ例をあげると

などというのもよく見かける。

初級レベルで辞書をひきながら読んでいると、わけがわからなくなりやすいポイントだが、逆にいうと、le, la, l’, les それ自体は大した意味ではないし、文脈でわかる内容だから無視してしまってもいい。それよりも、faire cuire, laisser reposer などがひとつの動詞として機能していることを理解するように。

練習2

作業手順全文から、「それ(ら)を」の意味で使われている le, la, l’, les を抜きだそう。


まったくの初心者がフランス語で書かれたレシピをすらすら読めるようになる連載(6)仕上げにつづく

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