p.XIV(3)=p.XV(1)
ピション男爵による『ル・メナジエ・ド・パリ』校訂版には付録として、ド・ルーベ侯の料理人であったオタンなる人物が書き送ったとされる「肉、魚のいろいろなブルーエの作りかた」が収められている。トゥルヌソル1を加えて作る「桃の花のブルーエ2」のごときひどく珍妙なソースは別として、オタンはクレーム・キュイットのレシピ3もいくつか記しており、それらは覚えておくだけの価値があるものだ。
p.XV(2)
15世紀なると、デグモン家の料理長を勤めていたらしいタブロなる人物が(タイユヴァンとは別の)『ル・ヴィアンディエ』を著した。これは手稿本のまま出版されていない4。『メナジエ』の作者同様、タブロもタイユヴァンや『料理全書』から多くを借用していて、彼自身の調理がどんなものだったかを捉えることはできない。が、タブロは実に見事にレシピの途中に自身の考えを差し挟んでいる。それに、「タブロにこの本は完璧だと伝え給え。この書の作者と聖母マリアに栄えあれ。アヴェ・マリア!」などという無邪気な文言が末尾にあるのを見ると、ひどいブルゥエのレシピも許せなくもないという気分になる。
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いわゆる「ひまわり」のことではなく、ムラサキ科の植物、ヘリオトロープ(キダチルリソウ)の仲間の実。ただし、WEBで利用できる中世フランス語辞典DMFでは”Lichen de la famille des oseilles (plutôt que fruit de l’héliotrope、tournesol )”と説明されており、要確認。トゥルヌソルはピション校訂版 p.220「青いジュレ」でも着色の目的で使用されている。 ↩
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すり潰したアーモンド、パン、ブイヨン、ヴェルジュ、生姜汁を鍋で沸かし、そこに熱いワインでもどしたヘリオトロープを加えて桃の花のような色合いに仕上げる。去勢鶏のロースト、鵞鳥の雛、若い兎のローストまたは去勢鶏のブイイと合わせる。ピション校訂版 p.276. ↩
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ゲガンがクレーム・キュイットと呼んでいるのはたとえば「アラゴンディ」だろう。作り方は、生クリームを陶製の鍋で沸かし、卵黄を加えて混ぜる。ここにたっぷりのバターを加える。溶き卵を流し入れる。砂糖を加える。焦げないように遠火で温めておく。Ibid. ↩
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1897年以前には「タブロのヴィアンディエ」と題した手稿本がピションの蔵書にあったが、その後は紛失、行方不明になってしまったらしい。Cf. Bruno Laurioux, La règne de Taillevent, Publication de la Sorbonne, 1997, p.72. ↩