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16世紀(6)
p.XXI(4)
プラティナは同時代人と比べてかなりまともな味覚の持ち主だったようだ1。香辛料の使用は適度であり、どんなに複雑なソースでも使うのは生姜とシナモン程度だ。レモンやオレンジの絞り汁、あるいはクローヴしか使わないこともある。この本に出ているモルタデッラ2はそこそこ美味しいだろう。「猟獣肉用ポワヴラード3」もさほど手を加えないでそのまま提供できそうだ。作者は「ローリエの葉でくるんで4串に刺した小鳥のローストに粉砂糖を振りかけたもの」を好む。だが、雀はまったく好まない。「雀は食べるには大きくて不味いし、消化に時間もかかる。なにより邪淫5を引き起こす」。シャルドヌレ6は雀よりもっと好まない。「食べ物として皿にのせるよりも、籠に入れて甘美な鳴き声を楽しんだ方がいいからだ」。また、カタローニャの料理を高く評価している。「彼らの料理に国民性がはっきり表れているから」だ。カタローニャの鶏のミローズ7や山うずらのソース添えなどはとても美味だと述べる。フランス語翻訳者は「我々フランス人はカタローニャをどんなに嫌っていてもこの料理を喜んで食べる。フランス人はカタローニャの料理は好きだが、カタローニャ民族は嫌いなのだ」と書き加えている。さて、海豚は中世に好んで用いられた食材で、マニーニというイタリア人が書いたレシピがある。プラティナの訳者デディエ・クリストルがそのレシピを再録し、とても面白い論考を加えている。
ポワヴラード
ポワヴラードはこんにちでもジビエ料理のソースとしてよく作られている。TLFというフランス語大辞典によると poivrade というフランス語の初出がまさしくここでゲガンが挙げているデディエ訳プラティナである(綴りは poyvrade)。ページ57rbに猟獣肉用ポワヴラード、77vaに魚用黄色いポワヴラードが出ている。
ゲガンは引用していないが、猟獣肉用ポワヴラードの内容を見ておこう。そのまま訳すと冗長なので、ここでは大意のみとする。
猟獣肉は水と同量の赤ワインをあわせたもので洗う。洗い水を捨て、適量の塩を加えて水煮する。パンをこんがりと焼き、ヴィネガーでふやかす。もどした干しぶどうとともにすり潰す。猟獣の血を加える。玉ねぎ少々とヴィネガーもしくはムー8を加えて混ぜ、タミか布で漉す。鍋に戻し、こしょう、生姜、シナモンなどを加え、混ぜながら30分程煮る。フライパンに獣脂を熱し、茹でておいた肉を焼く。大皿に盛り、ポワヴラードすなわちこしょうのソースをかける。