経験的なもの
ここまで書いたことは土壌の力を示す指標ではある。だが、確かさという点では経験的なもののほうが勝っている。実際のところ土の色は、ほぼすべての色において、相応の収量になるだろうという期待を裏切ることがある。馬でも犬でも、どんな毛色のものにもいい悪いがあるのと同じだ。これから取得しようという土地で平年どのくらいの収量となるのか正確に分からないのであれば、次の方法をとれば間違いない。植えてあるものでも自生しているものでも、そこに生えている木々を見るのだ。
生えている木々を見る
木々の大小、美醜、多寡からその土地がどのくらい肥沃かどうか判断できる。なかでも、野生の洋梨、りんご、プラムの木が生えていれば麦に適した土壌だと言える。さらに、小麦に適しているのはプラムの木がたくさん生えている土壌だ。りんごの木は粘土質であれ砂質であれいい土壌に見られるものだから、プラムの木に混じってりんごの木が生えていればライ麦に適している。
あざみ
あるいはこういう方法もある。あざみは洋梨の木に相当すると考える。
羊歯(しだ)
羊歯はりんごの木に相当する。あざみは粘土質の土壌に強く、羊歯は砂質に耐える。小麦、ライ麦の性質も同様なのだ。
気温
気温も目安になる。寒いよりは暖かいほうが小麦に適していて、暖かいよりは寒いほうがライ麦に向いていると判断できるのだ。
草
自生している草も目安として役立つ。獣が好んで食べる草が価値のない土地にたくさん生えることはけっしてないからだ。これは木が生えていない開けた土地でしか使えない方法だ。
地勢
ここで地勢について述べておく。地勢は土地の価値に大きく影響を与えるからだ。土地は必ず、平野、丘陵、山地の3種のどれかだ。平野も山地も両極端という点で丘陵地には劣る。丘陵地は平野か山地のどちらかの性質を帯びているから、中間的なものと言える。だから、その地方が温暖で、いい地所であるなら、丘陵地はいろいろな種類の作物を生産するのに適している。丘陵地は余程のことがない限りは収穫を得られないことはないのだ。だから、他の地勢よりも好ましく、欠点がないと言える。風や泥水が山地と平野では大きな被害をもたらすが、丘陵地ではそれ程でもない。
山地
山地で不都合なく出来るのは林業と牧羊だけだ。この2つについてはむしろ適していると言える。けれども、耕作したり、ぶどうの木や果樹を植えて、短期間で多量の収穫を得るのは難しい。どんなによく耕した圃場でも、雨によって土壌養分が流亡しやすく、土壌水分もすぐに失なわれてしまう。だから俗にこう言う。
傾いた土地には
金を置くな
平野
逆に、地面に何もない、あまりに平らな圃場は、長い間水を溜めてしまうので耕作するのに具合が悪い。土壌水分が多すぎると上手く耕せないし、捗らないのだ。収穫物も質、量ともに明らかに劣る。
丘陵地
そのようなわけで、平野や山地よりも悪天候に強い丘陵地のほうが好ましいことはよく知られている。だからこそ、ブリー地方は高く評価されているのだ。ボース地方と比べて立派な屋敷が多いことからも、平野より丘陵地のほうがずっと昔からいかに求められてきたかが分かる。
以上が土を知るための一般的な方法である。(第1章終わり)