小ネタ、というか Tips である。
サヴォイもカーヴォロ・ネーロもなかなか柔らかく火が通らない野菜だ。サヴォイは最低2〜3時間、カーヴォロ・ネーロはその1.5〜2倍の時間をかける必要があると答えることにしている。もっとも普段、尋ねられなければいちいちそんなことは言っていない。
昔からある話題なのだ。高度成長期に西洋野菜の普及に尽力した大木健二の著書にもサヴォイの話が出てくる。
得意先のレストランのシェフに「おやじさん、二時間も煮込んだのに味が染みこまないよ」と、噛み付かれました。長時間煮込まないとダメと言っておいたのに、向こうも料理人としての意地があるものだから、我流を通したのでしょう。この野菜を煮込むにはタップリ四時間。普通のキャベツならとろとろになってしまう時間でも煮崩れしません。(大木健二『大木健二の葉菜ものがたり』日本デシマル、p.84)
だが、ガルビュールやリボッリータを毎日延々と煮込んでいるならともかく、忙しい調理現場ではそんな悠長なことは言っていられぬかも知れない。
解決方法は存外簡単だ。基本的にはふたつある。
- 圧力鍋を使う
- 厳寒期の露地栽培で、強い霜に何度もあたったものを使う
ひとつめ。圧力鍋などない! という調理現場もあるだろう。が、なによりも、調理方法が限定されてしまうという欠点がある。
ふたつめ。時期がとても限られてしまうのが問題なのと、霜によってダメージをうけているからあまり見た目がよろしくなくなっていることもある。そうなると、検品をする者に知識がなければ納品時にはねられてしまうかも知れない。
というわけで、第3の方法
- いったん冷凍してから調理する
上のふたつめの状況を人工的に作りだせばいいのだ。ただ、どの程度冷凍すればいいのかは品種や冷凍庫の能力(仕様?)によって異なるから試行錯誤は必要だろう。
水は凍ると体積が増える、つまり膨張する。植物の細胞は細胞壁という殻のようなもので覆われている。中の水分が凍って固体として膨張すればタイヤのパンクのようなことになる。細胞壁に傷をつけるわけだ。そうすると火の通りが早くなる。
注意したいのは、凍って膨張した水分が解凍後、細胞壁の傷を通って流れ出てしまいやすくなるということ。いわゆるドリップとおなじことが起こる。野菜の場合は目に見えて水分が流れるケースは少ないからわかりにくいかも知れぬ。もちろん程度問題なのだが、極端な場合はスポンジ状になってしまい、すかすかでちっともおいしくないものになりかねない。だから、どの程度凍らせたらいいかは何度か実験したほうがいいだろう。
僕は使ったことがないのでわからぬが、ショックフリーザーならこのあたりの問題はコントロールしやすいような気がする。
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