カテゴリー: 料理フランス語

  • まったくの初心者がフランス語で書かれたレシピをすらすら読めるようになる○○?

    2024/05/11 追記 『フランス語レシピで自宅フレンチ 1 料理フランス語文法読本』を Apple BooksGoogle Play Books から2024年5月11日にリリースしました。この記事とあわせてご利用ください。

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  • 料理人がフランス語を習得するコツ? (2) — 方法論を知る

    このサイトのアクセス統計を見たら「料理人がフランス語を習得するコツ?」と題する投稿が初日で87PVになっていた。世間一般からすれば微々たる数字だろうが、畑仕事と思考の記録を綴っているだけのこのブログとしてはとてもめずらしいことだ。なにしろ普段ほとんどアクセスがないのだから。

    いちおう、ブログに投稿をすると Facebook と Twitter に自動的にリンクが流れるように設定してある。今回は Facebook 経由でのアクセスが大半だった。もっとも、このブログじたいはコメント欄を設けていないし、FB でもコメントなどなかったから、反響みたいなものはあるのかないのかわからぬ。

    ただ、多少なりとも関心を持たれるテーマなのだろうということはわかった。10年ちかく教壇に立っていたとはいえ、いまは一介の野菜生産者にすぎぬ僕にまで、フランス語を学ぶコツについて話せという求めがあったこともなんとなく得心がいく。

    方法論を知る

    さて、前回の投稿で、フランス語を習得したいという動機、目的、目標を明確に自覚すべき、と書いた。これがひとつめのポイントだ。

    つぎに、適切な方法論(メソッド)を知る。といっても、外国語学習(正確には第二言語習得という)それじたいは応用言語学の一分野だから、たいていのばあい、詳しく知る必要はない。いい教師に出会えればそれで充分だろう。

    独学の場合は学習者じしんが教師の役割も兼ねるわけだから、多少は知っておいたほうがいい。

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  • 料理人がフランス語を習得するコツ?

    以前、ある雑誌の対談で、ライターさんから「フランス語を学ぶコツ」に話をむけられたことがある。そのときは思わず言葉を濁して、というか、話題をすりかえてそしらぬ顔で対談をすすめたのだが、そのあたりのやりとりがそのまま活字になってしまい、なんとも冷や汗をかいた。

    すっかり忘れていたのだが、またもや「コツ」について話すことを求められてしまった。こんどは逃げられそうもない。しかたないので、わかりやすく説明するための予備練習として書いておくことにする。もっとも、あくまでも予備練習だから、この投稿じたいはちっともわかりやすくはならないと思うし、事情があって、さしあたりはさわり程度しか書かないつもりだ。

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  • ラタトゥイユとは? という検索語を見て思ったこと

    このサイトのアクセス統計を見ていると、6月以降「ラタトゥイユとは」の検索語でのアクセスが目立つ。

    実際に Google で検索してみるとたしかにそこそこ上位にこのサイトが表示されている。どうやら「とは」とつけるのがポイントのようで、ストレートに「ラタトゥイユ」だけで検索してもこのサイトは出てこない。

    「とはなどと言っていたら何も食べられないぞ1」と思うのだが、このキーワードにかぎらず「とは」を付けて検索するケースは多いようだ。

    それはともかく、アクセス統計に表示されるほかの検索語もデクリネゾン、エミエテ、アラヴァプール、ナヴァラン、ラング・エカルラートなどフランス料理関連のものが多い。というかほとんどだ。

    たしかに一時期フランス料理の話題ばかり書いていたし、それを消さずに残しているから当然なのだろうが、気まぐれにそういったキーワードで検索してみると、「日本に数多いるはずのフランス料理専門家はいったい何をしているのだろう?」と強く疑問に思う。

    料理名や料理用語の意味、由来を知りたいというニーズはたしかに顕在化しているのに、きちんと説明しているサイトはどれだけあるのだろう。いや、書籍でも雑誌でもいい。あるいは、料理の専門家であり専門知識があるとすくなくとも世間的には認知されているはずの料理人やレストランのスタッフでもいい。

    ラタトゥイユの由来はともかく、デクリネゾンだのエミエテだのの言葉はホテル、レストラン現場にいるプロくらいしか使わぬだろうから、そのひとたちがきちんと説明すればいいだけのことなのだ。

    だが、その専門家であるはずの「プロ」の知識は実際のところどうなのか… いろいろ伝え聞いてはいるが、悪口めいてしまうだろうからここでは書かない。ただ、もっとしっかりしたほうがよかろうとは思う。すくなくともプロの料理人がこのサイトを見て「勉強になります」などと僕に言うようでは困りものだ。もっとも、「勉強になります」と言うのはまだ素直でよろしい。料理人の場合、たいていは料理人の言うことにしか耳を傾けないからだ。かくして独自解釈や独自理論が再生産されるのだろう。

    いずれにしても勉強なんてものは自分でするものだし、基礎知識すらない「専門家」など許されるものではない。

    ©︎2015 Manabu GOTO


    1. 落語「千早振る」 
  • 青と緑は同じ色?

    日本語で「青信号」とは言うけど実際の色は緑だったりする.どうしてなんでしょうね…? いえ,こういうのを突き詰めて考えようとするとわけがわからなくなっちゃったりします(笑.料理関係のフランス語でもちょっと似たような現象があります.例えば,vert-cuit あるいは cuire vert という表現.vert は「緑」のことなんですが,ここでは「火の通し加減がほとんど生」という意味です.『ラルース・ガストロノミーク』初版では

    CUIRE VERT — Expression imagée indiquant le point de cuisson à faire subir à certaines viandes de boucherie conservées très saignantes. On emploie aussi l’expression «cuire bleu». ある種の畜肉を非常にセニャンな状態に火を通すことの比喩表現.«cuire bleu»とも言う.

    ステーキの焼き加減で「ブルー」というのがありますよね.それと同じということです.TLFiという辞書では

    Bifteck bleu. Servi saignant et peu grillé. ほとんど焼いていないセニャンな状態で供する

    となっています.「セニャン」saignant というのは「血のしたたるような,生焼けの」という意味です.

    ここまでを整理すると,肉の火の通し加減はセニャン=ブルー=ヴェールということになりますね.ステーキの焼き加減の場合はブルー < セニャン < アポワン (à-point) < ビヤンキュイ (bien cuit) のように段階をつけて表現することもありますが,その場合はブルー=非常にセニャン,くらいに理解するといいでしょう.

    さて,最初の cuire vert も「非常にセニャン」です.つまりブルー=ヴェールということになります.bleu のそもそもの意味は「青」,vert は「緑」です.

    青と言おうが緑と言おうが「非常にセニャン」ということはほぼ生なわけですから,段階なんかつけようがないんでしょうね.だから『ラルース・ガストロノミーク』初版ではこの2つの表現は同義ということになっているわけです.

    この「ほとんど生」な焼き加減の表現は,ステーキの場合には「ブルー」,猟鳥(とりわけベカス)については「ヴェール」が用いられます.そういう言語習慣なんです.

    というわけで,決してブルー<ヴェール<セニャンじゃないです.いえ,そう主張してもいいんでしょうけど,言語的コンセンサスからは明らかに外れちゃいますし,あんまりにも微妙で主観的な判断が入るでしょうから,一般化するのはいささか乱暴でしょうね.ブルー=ヴェール=セニャン,あるいはブルー=ヴェール<セニャンくらいに理解しておくといいでしょう.

    あと,『ル・ギード・キュリネール』などで vert-cuit が指定されているのは猟鳥のサルミが代表的ですが,あれはバルデ(豚背脂のシートで胸肉の部分をくるむ)した猟鳥を丸ごと串に指してロティールする,その段階では vert-cuit にしろということです.その後,カットして肉とガラに分け,ガラを使ってソースを作ります.その間,肉はフランベしてから少量のフォンを加えて保温しておきます.何度で保温するか具体的な温度指定はないんですが,実際上は現代で言うところの「低温調理」をしているのに等しいということを頭に入れておいたほうがいいでしょうね.個々のルセットにしか目がいかないと,このあたりは見落しがちかも知れません.

    ついでに,à-point (アポワン)という表現,「丁度いい火の通し加減」という意味です.この表現はステーキ以外でもよく使いますが,具体的にどの程度まで火が通っていたら「丁度いい」かは素材によっても,またその大きさによっても違ってくるわけですから,日本語で「ミディアム」というのとは根本的に意味が違います.大事なポイントなのでしっかり押えておきましょう.

    もうひとつついでに,火の通し加減とは関係ありませんが,vin bleu という表現があります.「質の悪いワイン」という意味です.もっぱら赤ワインについて言います.

  • モンプリエ? モンペリエ?

    「ロチルド」ネタはあんまりウケがよくないみたいですけど,もうちょっと発音ネタを続けてみましょうか… まずは南フランスの地名,Montpellier 音声ファイルは例によって forvo.com から.

    Montpellier

    Montpellier

    Montpellier Saint Roch

    montpellier-saint-roch

    要するに,ll の前の e を / ɛ / (カタカナだと「エ」ですね)と読むかどうかが問題になるわけです.が,結論から言うと,どちらも正解なんですよね.

    ところが,A.O.C. などでおなじみの単語…

    appellation

    appellation

    appellation contrôlée

    appellation contrôlée

    appellation d’origine contrôlée

    appellation d’origine contrôlée

    appellation d’origine protégée

    appellation d’origine protégée

    皆さん「エ」と読んでますね.

    appellation
    appellation

    辞書では  /a.pɛ(l).la.sjɔ̃/ または /a.pe.la.sjɔ̃/ ということになっていて,/ ɛ / か / e / という違いはあるにせよ,しっかり発音されるということになっています.(/ ɛ /はあまり口に力を入れずに「え」と発音すると近い音になるかな.一方の / e / は唇を横に引っぱるような感じで「エ」と発音するんですが,人によっては「イ」のように聞こえたりもする音)

    ところが,言葉というのは「ナマモノ」的要素もあるんで,辞書が絶対に正しいとか,みんながみんな辞書の通りの発音をするわけじゃないんですよね.「方言」なんかもそうですけど,やっぱり地域差,個人差,時代による違い etc. いろんな要素があるんです.だからでしょうね,Forvo にはこんな音声ファイルもありました.

    l’appellation

    l’appellation

    とはいえ,外国語を学ぶ場合は「正しい言葉」を身につける必要があります.appellation は  /a.pɛ(l).la.sjɔ̃/ または /a.pe.la.sjɔ̃/ が正しいとされているわけですから,「エ」と読むんだと覚えておいたほうがいいですね.

  • ロートシルト? ロチルド?

    以前教師をしていたころ時折授業で使っていた小ネタ.19,20の学生さん相手だとまるっきりウケが良くなかったんだけど,フランス料理関係者だとどうだろう…その前に現状の数字を確認しておくと…

    Google での検索結果;

    • 「ロートシルト」約 104,000 件
    • 「ロッチルド」約 7,520 件
    • 「ロチルド」約 7,360 件

    Rothschild のフランス語ネイティヴさんたちによる発音はForvo で聴くことができる。

    (20121225)

    追記……Rothschildを日本語のカタカナ書きにする場合は「ロスチャイルド」でいいと思う。(20230814)

    ©︎2023 Manabu GOTO