タグ: ミニマルキュイジーヌ

  • ミニマルキュイジーヌあるいは素材のミニマリズム

    Cuisine minimaliste, ou Ingrédients minimalistes

    玉ねぎとマヨネーズのトースト©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    玉ねぎとマヨネーズのトースト©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

    インスタなどで使うハッシュタグを考えていて思いついた表現。というか#cuisineminimalisteはすでにそこそこ使われている。僕が発明したわけでもなんでもない。いっぽう、日本語の#ミニマルキュイジーヌはいまのところ僕しか使っていないみたいだ。

    フランス語のcuisine minimalisteという表現はなんとなくマリネッティの「未来派料理」cucina futurista (cuisine futuriste)を連想させるかもしれない。もっとも、あれはパスタ排斥=伝統的食文化の否定であり、ひとつの完全栄養食品を理想形とするトンデモだったわけで、20世紀初頭という「時代のあだ花」みたいなものと僕は思っている。

    ミニマルというカタカナ語をきちんと日本語にすれば「最小限の(単純な)」くらいになるだろうか。「ミニマルな暮らし」とか「ミニマルな生き方」「ミニマルライフ」が流行ってるみたいだからその流れでミニマルキュイジーヌも受け入れられるといいなあと思っている。

    ただ、料理をいうからには「おいしい」が絶対条件だと思うから、僕はあえて「キュイジーヌ」というカタカナでちょっと気取った感じにしている。いや、本もあるくらいだから「ミニマル料理」でいいんですよ(その本は読んでないけど)。その表現が定着するのだっていいと思う。たんに僕の思っているもの、僕が日々作って食べてるものとちょっとニュアンスが違うかな、というだけのこと。

    だからキュイジーヌでも料理でもいいんだけど、ミニマルは素材の良さと調理する人の手際(技術)にすべてがかかってくる。都市生活者にとっては経済的にあんまりミニマルにはならないかも知れないが、素材にカネを惜しんではミニマルキュイジーヌはたんなる「手抜き料理」にしかならない。しかもたいていはおいしくない。おいしくないということはミニマルキュイジーヌとして失格だ。だから素材はとにかくいいものを使いたい。

    ミニマルキュイジーヌの真価は野菜(を大切にした)料理で発揮される。ここを惜しんではいけない。考えて見てほしい。野菜はどんなに高価なものでも、牛・豚・羊肉や鶏などと比べたらたかが知れてる。野菜生産者としてはとても残念なことだが、これをケチりたがるレストラン経営者や料理人さんは多い。そりゃ、肉・魚料理に「添える」ものだったらそういう発想になるのもわからなくはないけど、だったらいっそのこと野菜なんか添えなきゃいいのにというのが素朴な感想だ。

    なにしろ今の日本で、そのへんで簡単に入手できる野菜はたいていおいしくない。まずくはなくてもおいしくない。これは至極あたりまえのことで、野菜というのは芋類やかぼちゃといったでんぷん質主体のものをのぞくと、新鮮であればあるほどおいしいからだ。一般的に知られているレベルでいうと、たとえばほうれんそう。生産者が朝収穫する。当日に調製(根を切ったり傷んだ葉を取り除いて計量、袋詰め、箱詰めする)すると農協あるいは出荷場には翌朝となるパターンは多い。出荷後に卸売市場に運ばれて1日。卸売市場で販売されるのは翌朝。そこで仲卸、八百屋、スーパーなどが仕入れて小売されることになる。だいたい2〜3日。これは最短のケース。卸売市場での販売価格は需給関係で日々変わるから出荷調整といって農協などで1・2日保管されることもある。さらに、卸売市場から仲卸、八百屋、スーパーなど小売業者が仕入れたものが一般の人々の手元に届くわけだが、ここでも最短は当日、売れなければ商品がダメになるまで在庫させて売り場に並ぶか八百屋やスーパーのバックヤードの冷蔵庫に居座る。だから長ければ収穫から1週間経って売られているものはざらにある。

    もうひとつ、「安全・安心」をうたう自然派の食材流通業者の場合だと、出荷されてからピッキング場に集められてそこで仕分け、箱詰めされて出荷されることが多いみたいだ。宅配食材の業者だけでなく、大手ハンバーガーチェーンや外食チェーンに納めてる八百屋さんもピッキング場を構えている。だいたいは定温庫か保冷庫になってるらしいから、そこでそれなりの時間を野菜が過ごしているであろうことはことは想像に難くない。

    もうひとつ、野菜というのは収穫してから間にはいる人間が少ないほどいい。時間とか移動距離みたいに客観的な数字で表せないけれど、どういうわけか経験的にそうみたい。多分、流通過程でなんらかの形で人の手に触れるわけだが、野菜の扱いは一律でいいということなんてなく、品目や季節、産地そして個々の品物それ自体によって気を使うべきところがそれぞれ違う。そこまでの知識、技能を持った人だけがやってる仕事?

    そりゃ、野菜をおいしくないと感じる人が多いわけだ。

    ミニマルキュイジーヌの理想を追いもとめるなら、家庭菜園なりで自分で食材をつくり、自分で調理して自分(とごく近しい人)だけで味わうのがいい。

    そう、僕が言ってるミニマルキュイジーヌというのは食を自分の手に取り戻すことに繋がる。食べるということ、食欲は個としての人間存在の根源にかかわる。そういう意味で、自分自身を自分の手に取り戻すことにつながるとつながると言ってもいいだろう。

    あと、現代日本では多くの人においてアミノ酸、脂質について味覚の感受性が鈍くなってる(マヒしてる)ようだから、これらをリセットするのをお勧めしたい。とりわけアミノ酸は注意が必要で、食品の原材料表示の「調味料(アミノ酸等)」だけじゃなく「たん白加水分解物」と「酵母エキス」も気をつけたほうがいい。これらは名称こそ違うけど本質的には同じものと言っていい。

    おまけ

    画像は玉ねぎとマヨネーズのトースト。使った玉ねぎは泉州という品種。パンは鳥越製粉ドヌールといわゆる赤サフを用い、加水率70%で焼いた自家製(翌日使用)。マヨネーズはキユーピー。オーブントースターで200℃、11分。今年は植えたのが遅くて大きくならなかった玉ねぎだが、味わいはとてもいい。コンビニにありそうな惣菜パンだけど、パンと玉ねぎの違いで大きく変わる。いろいろ試してみると面白いかも。

    玉ねぎとマヨネーズのトースト(プロセス1)©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    玉ねぎとマヨネーズのトースト(プロセス1)©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    玉ねぎとマヨネーズのトースト(プロセス2)©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    玉ねぎとマヨネーズのトースト(プロセス2)©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

     

     

    ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

     

  • クロスティーニ用カーヴォロネーロまたはサヴォイキャベツの外葉

    Chou palmier ou feuilles extérieures de chou vert pour crostini

    10分でできるお手軽ミニマルキュイジーヌ!

    Cuisine minimaliste. 10 minutes de préparation – cuisson !

    crostini aux feuilles extérieures de chou vert@2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    crostini aux feuilles extérieures de chou vert@2023 lespoucesverts Manabu GOTO

    材料(2人分)

    • カーヴォロネーロ……5枚(またはきれいで新鮮なサヴォイキャベツの外葉2枚)
    • トマト・サンマルツァーノ3……1個(またはミニトマト5個)
    • とうがらし カイエンヌ(フレッシュ)……1
    • 紫にんにく……1
    • アンチョビペースト
    • オリーブオイル、塩、こしょう

    作り方

    1. カーヴォロネーロは洗ってコット(中肋)を取り除き、細かく刻む。
    2. トマトは適当な大きさに切る。皮はむかない。
    3. カイエンヌは半割りにして包丁の先で中の種子とわたを取り除く。
    4. にんにく(みじん切り、薄切り、叩いただけ、どれでもいい)とカイエンヌ、たっぷりのオリーブオイルをフライパンで香りが出るまで弱火で熱する。
    5. カーロヴォネーロとトマト、塩適量、アンチョビペースト適量をフライパンに投入し、強火で野菜から出た水気がほぼなくなるまで炒める。
    6. こしょう。
    7. パンにのせていただく

     

    コット(中肋)を取り除くのが大事なポイント!

    サヴォイキャベツの外葉は結球部分に栄養を取られてしまうものです。収穫してから時間の経ったものはおいしくなくなっているはずです。キャベツにしろレタスにしろ結球野菜というのは本質的にそういうものなので一般的に外葉は使われずに廃棄されるわけです。とはいえ採りたてなら調理次第でとてもおいしくできます。

  • サンマルツァーノ3のオーブン焼き

    Pomodoro San Marzano 3 fresco al forno

    手軽でおいしい適当レシピ

    Pomodoro San Marzano 3 al forno©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    Pomodoro San Marzano 3 al forno©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

     

    材料

    • トマト サンマルツァーノ3
    • とうがらし カイエンヌ(フレッシュ)
    • 紫にんにく(みじん切り)
    • パン粉
    • パルミッジャーノ(すりおろし)
    • パセリ(みじん切り)
    • Exバージンオリーブオイル
    • 塩・こしょう

     

    作り方

    1. トマトは洗って半割りにする。へた近くの白く固い部分はなるべく取り除く
    2. カイエンヌは半割りにして中の種子とわたを取り除く(辛いのが好みなら種子を取り除いてから小口切りにし、3に混ぜ込んでもいい)
    3. にんにく1、パン粉1、パルミッジャーノ1、パセリのみじん切り3、オリーブオイル2くらいの割合で混ぜ合わせ、耐熱皿に切り口を上にして並べたトマトにのせる
    4. 230℃のオーブンで約15分、トマトにしっかり火が入り、同時にトマトの上の3がこんがり色づくように焼く
    5. 塩、こしょう
    Pomodoro San Marzano 3 al forno©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    Pomodoro San Marzano 3 al forno©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

     

    焼きあがったトマトをフォークでつぶして、茹で上げたパスタのソースにしても美味です。

    Spaghetti con pomodoro al forno©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    Spaghetti con pomodoro al forno©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
  • トマト プリンチペ・ボルゲーゼのスパゲッティ

    Spaghetti al pomodorino Principe Borghese fresco

    サンマルツァーノ3のスパゲッティとまったく同じ手順なのでレシピをあらためて書く必要もないくらいですが、火加減と加熱時間を変えます。個人的にはこちらのほうが圧倒的においしいと思っています。手際よく仕上げるのがポイント。

    sugo di pomodorino Principe Borghese©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    sugo di pomodorino Principe Borghese©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

    材料(2〜3人分)

    • トマト プリンチペ・ボルゲーゼ(フレッシュ)……6個(200g弱)
    • とうがらし カイエンヌ(フレッシュまたは乾燥)……1
    • 紫にんにく……1かけ
    • Exバージンオリーブオイル……適量
    • イタリアンパセリ……適量
    • 塩・こしょう
    • スパゲッティ(またはスパゲッティーニ)……250g

     

    手順

    1. プリンチペ・ボルゲーゼは洗って四つ割りに切る
    2. カイエンヌは縦半分に切って中の種子とわたを取り除く
    3. にんにくは薄切りにする
    4. フライパンにオリーブオイル、カイエンヌ、にんにくを入れ、ごく弱火にかける
    5. 香りがたってきたらカイエンヌを取り出す
    6. プリンチペ・ボルゲーゼを投入し強火にする
    7. 煮詰まって水分がなくなってしまわないよう火加減を注意し、木へらでトマトを潰しながら約7分間加熱する
    8. 塩・こしょう
    9. スパゲッティの茹で汁大さじ2を加えて混ぜ、茹でたてのスパゲッティを投入して手早くソテーする
    10. 皿に盛り、イタリアンパセリを散らす
    Spaghetti al pomodorino Principe Borghese fresco©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    Spaghetti al pomodorino Principe Borghese fresco©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

    フレッシュなプリンチペ・ボルゲーゼはサンマルツァーノ系より水分が多いので強火で加熱します。

    パセリではなくバジルを散らしてもいいでしょう。

    サンマルツァーノ系統のトマトを使う場合よりも素材の良し悪しと手際のよさがはっきり仕上がりに反映されます。

    ©2023 lespoucesverts ManabuGOTO

  • カーヴォロネーロのキッシュ

    Quiche au chou palmier (Torta salata con cavolo nero)

    イタリアのイメージが強いカーヴォロネーロを親しみやすいフレンチに。

    カーヴォロネーロのキッシュ Quiche au chou palmier ©2023 Manabu GOTO
    カーヴォロネーロのキッシュ Quiche au chou palmier ©2023 Manabu GOTO

     

    16cmタルト型2枚分

    1. カーヴォロネーロはざく切り(一辺2cm以下)にする
    2. 小たまねぎは薄切りにする(2mm程度)
    3. 塩漬け豚ばら肉は5mm程度のダイス状に刻む
    4. フライパンにひまわり油(分量外)を熱して1〜3を投入、ざっと炒めたら 蓋をして15分エチュヴェ(蓋をして弱火で蒸し焼き)する。塩こしょう。そのまま粗熱をとる
    5. 型にフォンセ生地を敷き詰める
    6. 卵を溶きほぐし、生クリームと混ぜ合わせる。4を加え混ぜ合わせる
    7. 型に流し込む
    8. 190度のオーブンで25分焼成する

    塩漬け豚ばら肉を使いましたが、なければパンチェッタを使うといいでしょう。日本で一般的なベーコンは薫香(たいていはくん液=木酢液)がとても強いのでキッシュには避けたほうがいいです。豚肉加工品ではなくオイル漬けのアンチョビを使ってもおいしくできます。

    中肋を取り除くのがポイント。どうしても使いたい場合は火入れその他いろいろ工夫してください。加熱時間が大きく変わるはずです。

    厳冬期、強い霜にあたったカーヴォロネーロはすぐに柔らかく火が通るので仕上がりが異なります。

    フリッタータにしておいしい葉茎菜はだいたいキッシュにしてもおいしいです。

    カーヴォロネーロと小たまねぎ ©2023 Manabu GOTO
    カーヴォロネーロと小たまねぎ ©2023 Manabu GOTO
    カーヴォロネーロは中肋を取り除く©2023 Manabu GOTO
    カーヴォロネーロは中肋を取り除く©2023 Manabu GOTO
    塩漬け豚ばら肉 lard maigre maison ©2023 Manabu GOTO
    塩漬け豚ばら肉 lard maigre maison ©2023 Manabu GOTO
    ガルニチュール(フィリング)©2023 Manabu GOTO
    ガルニチュール(フィリング)©2023 Manabu GOTO
    卵と生クリーム©2023 Manabu GOTO
    卵と生クリーム©2023 Manabu GOTO
  • フレッシュサンマルツァーノ3で作るスーゴ・プッタネスカ

    sugo puttanesca con pomodoro san marzano 3 fresco ©2023 Manabu GOTO
    sugo puttanesca con pomodoro san marzano 3 fresco ©2023 Manabu GOTO

    スパゲッティ・プッタネスカ(娼婦風)に用いるソースですが肉料理や魚料理にも合わせられます。フレッシュのサンマルツァーノ3を煮詰めて濃厚な味わいに。

     

    材料

    • トマト サンマルツァーノ3(フレッシュ)……400g
    • アンチョビ(オイル漬け)……1缶
    • オリーブ……2個
    • ケイパー(酢漬け)……小さじ1
    • にんにく……1片
    • カイエンヌとうがらし……1
    • オリーブオイル、塩、こしょう、イタリアンパセリ……適量

    手順

    1. サンマルツァーノ3は湯むきして白い部分を取り除き、適当な大きさに刻む
    2. にんにくとオリーブはスライスする
    3. カイエンヌは種を取り除く
    4. フライパンにアンチョビ、オリーブオイル、にんにく、カイエンヌを入れて香りが立つまで弱火にかける(焦がさないように注意)
    5. サンマルツァーノ3を投入し中火〜強火にする
    6. 焦げ付かないように時折混ぜながら、好みの濃さになるまでトマトを煮詰める
    7. ケイパーを加え、塩、こしょうで味を調える
    8. イタリアンパセリをちぎって散らす

    しっかり煮詰めるのがポイント。

    過熟くらいまで真っ赤に熟したものを使うといいでしょう。

    パスタと合わせる場合、塩味は「ちょっと濃すぎるかな」くらいの味にしておくといいでしょう。

    ©2023 Manabu GOTO

    pomodoro san marzano 3 ©2023 Manabu GOTO
    pomodoro san marzano 3 ©2023 Manabu GOTO
    pomodoro san marzano 3 ©2023 Manabu GOTO
    pomodoro san marzano 3 ©2023 Manabu GOTO
  • フレッシュトマト(サンマルツァーノ3)のスパゲッティーニ

    Spaghettini al pomodoro San Marzano 3 fresco ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    Spaghettini al pomodoro San Marzano 3 fresco ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO

    サンマルツァーノ3 (San Marzano 3)はトマトの品種名です。

    とれたてのフレッシュなサンマルツァーノタイプのトマトとカイエンヌとうがらしを使う、あっさりした仕上がりのレシピです。

    材料

    3人分(パスタ250g)

    • トマト サンマルツァーノ3(フレッシュ)……3個
    • とうがらし カイエンヌ(フレッシュ)……1
    • にんにく……1片
    • イタリアンパセリ……2枝(葉と茎を分ける)
    • スパゲッティーニ(1.55mm)……250g
    • 塩、こしょう、オリーブオイル

    手順

    1. サンマルツァーノ3は湯むきをして2〜3cm角にざっくり刻む。
    2. カイエンヌは縦2つに切って種とわたを取り除く
    3. にんにくは薄くスライスする
    4. フライパンにオリーブオイル、にんにく、カイエンヌ、パセリの茎を入れて弱火にかける
    5. 沸騰した湯に1%の塩を溶かし、スパゲッティーニを投入。時折混ぜながら茹でる
    6. フライパンから香りがたってきたらパセリの茎を取り出し、サンマルツァーノ3を投入。中火にする。トマトの果肉がさらさらと煮崩れるのが目安。塩、こしょう。
    7. スパゲッティーニは固めに茹で上げ、ざるにあける(茹で汁は少し残しておく)
    8. フライパンにスパゲッティーニを投入し、よくあえる(トマトが煮詰まっている場合は茹で汁で調整する)
    9. 皿に盛り、イタリアンパセリを散らす

    サンマルツァーノタイプのトマトは煮詰めると酸味が出ますが、火入れが浅いととてもあっさりした仕上がりになります。

    パセリではなくバジルを使ってもいいですが、日本で一般的なスイートバジルだと香りが強すぎるでしょう。

    日本ではフレッシュトマトのパスタというと糖度の高いトマトを使った濃い味つけのものが主流ですが、さっぱりした仕上がりもおすすめです(とくにプリモピアットとして、後に魚料理や肉料理を続ける場合)。

    上の手順は茹で時間5〜6分のパスタを使う場合です。つまりトマトの加熱時間を4〜5分と想定しています。パスタを茹でるのとソース作りの同時進行が難しい場合は先にソースを作って火を止めておきましょう。パスタが茹で上がったらフライパンを強火にかけてからパスタをあえます。

    カイエンヌは日本のトウガラシと比べると辛さが弱い品種です。日本のトウガラシで代用するよりは省略したほうがいいでしょう。

    シンプルなだけに段取りと手際の良さが要求されるレシピです。繰り返し調理して好みの仕上がりを目指しましょう。

    Pomodoro San Marzano 3 ©2023 Manabu GOTO
    Pomodoro San Marzano 3 ©2023 Manabu GOTO
    Peperoncino Cayenna ©2023 Manabu GOTO
    Peperoncino Cayenna ©2023 Manabu GOTO

     

  • カーヴォロネーロのポレ

    カーヴォロネーロのポレ ©︎2023 Manabu GOTO
    カーヴォロネーロのポレ ©︎2023 Manabu GOTO

    ポレ porée はフランス中世の料理。葉野菜を溶けるまで煮込んだシンプルなポタージュ。いつまで加熱しても柔らかくならないと有名シェフでさえ文句を言うことのあるカーヴォロネーロがとろとろうまうまなポタージュに。

    ※圧力鍋を使います

    材料

    (6〜8人分)

    • カーヴォロネーロ 20枚
    • 玉ねぎ ½個
    • トマト(赤の濃いもの、なくてもよい)200g
    • カイエンヌ (とうがらし、種子は取り除く)½本
    • 豚肉(脂身の多いもの)200g
    • オリーブオイル 100mL以上(豚肉の脂身の量に合わせて加減していいが、たっぷり使うのがポイント)
    • 水 300mL
    • 塩 大さじ1
    • こしょう 適量

    作業

    1. カーヴォロネーロはよく洗う。コット(中肋いわゆる軸)を取り除き細かく刻む(千切り)
    2. 玉ねぎはスライスする
    3. 豚肉は適当な大きさに切って表面をこんがり焼く
    4. 圧力鍋にオリーブオイルを熱し、カーヴォロネーロと玉ねぎを炒める
    5. しんなりしてかさが減ったらこしょう以外のその他の材料を投入する。圧力鍋に蓋をして沸騰させ、圧力がかかった状態で弱火で1時間加熱する。圧力が抜けるまで放置する。
    6. 味を調え、こしょうで仕上げる。

     

    圧力鍋はメーカーによって加熱時間が異なります。1時間はラゴスティーナを使用した場合。ピースプレッシャーパンなどはより高圧になる傾向があるのでやや短時間になる。

    パンを浸しながらいただきます。バゲットをスライスしてこんがり焼きクルトンのように浮かべてもいいでしょう。

    トマト、カイエンヌは省いた方がより中世料理っぽくなります(おすすめ)。

    コット(中肋)を取らないと大根葉の炒め煮のような見た目になってしまいます。コットはとくに火が通りにくいのでどうしても使いたい場合は工夫してください。

    圧力鍋を使わない場合は4、5時間以上加熱する必要があります。

    状態のいいサヴォイキャベツの外葉を使うこともできます。その場合は油脂分を多めにするといいでしょう。

    ©︎2023 lespoucesverts Manabu GOTO

    ※レ プゥス ヴェール ごとう菜園のカーヴォロネーロはオンラインショップからお買い求めください

     

    カーヴォロネーロ ©︎2023 Manabu GOTO
    カーヴォロネーロ ©︎2023 Manabu GOTO
  • ルーコラ・セルヴァティカのスパゲッティ(お手軽バージョン)

    spaghetti con rucola selvatica

    ルーコラ・セルヴァティカのスパゲッティ(画像は2人分)

    野菜農家の直売アイテムとしてひっそり定着した感もあるルーコラ・セルヴァティカ。ごまを思わせる強烈な香りと独特な風味で知られ、サラダや皿の『あしらい』的に使われることも多いようだ。

    ただ、強い香りと風味は刺激になるからあんまり大量には食べられないのが難点。ビタミン豊富な葉野菜だからたっぷり食べたいところ。

    この野菜のポイントは

    • 加熱すると香りと風味が瞬間的に失われる
    • 抽苔茎(花がつく茎)は固くて食べられたもんじゃない
    • 黄色い花はルーコラらしい風味があって美味(1人分)

    1人分の材料

    •  ルーコラ・セルヴァティカ 50g
    • トマトソース
    • スパゲッティ 70〜100g
    • 塩、こしょう

    作りかた

    1.  ルーコラ・セルヴァティカは水でよく洗う。柔らかい小さな葉は別に取り置く(ポイント!)のこりは2cmくらいの長さに刻む
    2.  パスタを茹でる。トマトソース (グーグル検索)をつくる。
    3.  スパゲッティが茹で上がる30秒前に刻んだルーコラを鍋に投入。パスタの茹で上がりは固めにするといい。
    4. スパゲッティとルーコラをザルにあけ、トマトソースのフライパンに投入。よくあえる。
    5. 生の柔らかいルーコラの葉をトッピング(大事なポイント!)

     

    ※ようするにスパゲッティ・トマトソースにルーコラを加えただけ。レトルトのトマトソースを使ってもいいが仕上がりはそれなりだろう。逆に言うと美味しくつくるには手際とセンスのよさがとても大事。

    ※トマトソースは一人あたりトマト水煮缶50g+にんにく ¼片(スペイン産)+とうがらし(カイエンヌにかぎる)¼+オリーブオイル+塩、こしょうでつくった分量が目安。不思議なことに、トマトが主材料にもかかわらずにんにくととうがらしで決まる。

    ルーコラ・セルヴァティカ
  • エルバステッラのフリッタータ

    frittata con erba stella minutina

    どうしていいのかわからない、皿の飾りにしかならないという声もちらほら耳にするエルバステッラ。もとはイタリアのものだから、プロとはいえフランス料理が専門だといたし方ないのはしょうがないのだろう。

    だがイタリア料理はフランス料理の近接領域。いまやルーコラ・セルヴァティカがあたりまえにフランス料理で用いられているのだし、エスコフィエ『料理の手引き』ではパスタとリゾットに相応のページを割き(原書で計8ページ)、ダンバルにフォンセ生地ではなくマカロニを使ったり、イタリア料理由来のレシピを数多く収録されてるくらいだ。

    エルバステッラは日本の種苗会社が小袋の種子を販売してるからそこそこ日本でも知られるようになったかと思いきやあいかわらずまったく無名の様子。甘くておいしいといったたぐいのものじゃないから葉菜としてメインストリームにはのれそうにないけど、独特の歯ごたえと風味を愉しむ、いってみれば余裕のある都市生活者だからこそ田園や田舎に惹かれるような、魅力ある野菜として認知されることが願われる。漢方薬や健康食品の原料として用いられるオオバコの一種だからそういうイメージを付加することももちろん可能だろう(個人的にあまり好きな手法ではないが)。

    さて、美味しく食べる方法だ。若くて新鮮な葉はそのまま生でサラダのいいアクセントになるが、ポイントをおさえれば簡単に前菜1皿仕上がる。以下はその一例。ちょっとやそっとの加熱でエルバステッラ独特の歯ごたえが失われることはないので、多少雑にやっても大丈夫。

    (2〜4人分)
    * エルバステッラ 50g
    * 全卵 4
    * 塩、こしょう 適量
    * 粉チーズ 適量
    * オリーブオイル 適量

    1. エルバステッラはよく水洗いして、沸騰した塩湯で下茹でする(塩1%)。再沸騰したら取り出してザルにあける。
    2. 冷めたら適当な長さに切る(1cmくらい)
    3. 卵を解きほぐし(できたら網で漉す)、エスバステッラ、塩、こしょう、粉チーズを加えてよく混ぜる。
    4. フライパンにオリーブオイルを引いて卵液を流し入れる。
    5. 蓋をしてごく弱火で加熱する(オーブンに入れるといい)。オーブンを使わない場合は適当なタイミングで裏返して蓋をし、ふんわり火を入れる。

    ※ポイントは下茹で。手抜き料理とはいえこれだけは絶対に省略しないこと。
    ※キッシュのアパレイユのように、卵液に生クリームなどを加えてもいい。
    ※いまどきの「甘くておいしい」ような葉野菜ではないのでそういうのを期待するひとにはおすすめできない。独特の歯ごたえと野趣あふれる風味、つまりいまどきの葉野菜にない「草」な感じを楽しんいただきたい。(©2023 Manabu GOTO)

    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
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    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO
    エルバステッラのフリッタータ©2023 lespoucesverts Manabu GOTO