17. 牛舌肉のラグゥ仕立て Langue de boeuf en ragoût

牛舌肉に、長い棒状に切った背脂をラルデ針で縦に刺し込む。鍋で茹でる。しっかり味付けする。おおむね火が通ったら火から外して冷ます。拍子木に切った背脂を刺し、ロースト用の串を通す。煮汁をかけながら焼き上げる。串を抜いたら煮汁に戻し入れ、すり潰した玉ねぎ少々、背脂少々、ヴィネガー少々を加えて弱火で煮込む。
Lardez la de gros lard, puis l’empotez, faites cuire, et assaisonnez de haut goût. Lorsqu’elle sera presque cuite laissez la refroidir, piquez la, embrochez, et arrosez de son ragoût jusques à ce qu’elle soit rotie, et tirée faites la mitonner dans la sauce avec un peu d’oignon pilé, un peu de lard, et un peu de vinaigre, puis servez.

肉を下茹で→ロースト→煮る、というプロセスは中世の料理では珍しくなかった。その意味では、この「牛舌肉のラグゥ仕立て」はやや前時代風なのかも知れない。一方、中世で多用されていた香辛料がまったく使われていない点も面白い。

ローストする際に煮汁をかけながら(アロゼ)焼くわけだが、語学的な面では、その煮汁をラグゥ ragoût と呼んでいるのがとりわけ興味深い。さらにこの煮汁はソース sauce と言い換えられている。

ラグゥ ragoût は17世紀になってから用いられるようになった言葉で、語源的には「食欲をそそるもの」の意があるわけだが、ここでは既に、「ソースと具材が一体になった煮込み、およびその煮汁(ソース)」の意味で用いられていることが確認されるわけだ。

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