34. 鵞鳥のラグゥ仕立て Oie en ragoût
鵞鳥1羽は4つに切り分け、よく叩く。小麦粉をまぶしてフライパンで表面を焼く。ブイヨンで煮て、各種香辛料とブーケガルニを加えて味付けする。鵞鳥のレバー、砂肝、手羽、頸づるを加える。ソースをよく煮つめてとろみが付くようにする。
Prenez une oie, la coupez en quatre étant bien battue, la farinez et faites passer par la poêle, puis la faites cuire avec du bouillon, l’assaisonnez de toute sorte d’épice et d’un bouquet. La garnissez de tous ses abatis, qui sont foie, gésier, ailes, et col: que la sauce soit courte et liée, puis servez.
35. サルセル鴨のラグゥ仕立て Sarcelles en ragoût
サルセル鴨を掃除して形を整えたら、薄切りにした背脂で包む。フライパンで表面を焼く。(鍋に移し、)しっかりと味付けをしたブイヨンを注いで弱火で煮る。豚背脂少々、小麦粉少々、玉ねぎ、ケイパー、マッシュルーム、トリュフ、ピスタチオ、レモンの外皮を加える。
Etant habillées bardez les de moyen lard, les passez par la poêle et les faites mitonner avec bouillon bien assaisonné, puis les passez avec un peu de lard et de farine, oignon, câpres, champignons, truffes, pistaches, et écorce de citron tous ensemble, puis servez.
Moyen lard は古い料理書で見かける表現。gros lard は赤身をほとんど含まない脂身で、もっぱら背脂のこと。petit lard, lard maigre はいわゆる豚ばら(三枚肉)で、脂身と赤身からなる。通常は塩漬けにしたものを使う。moyen lard はその中間、やや赤身の混ざった脂身と解釈されるが、実際上は背脂または豚ばらの脂身と捉えていいだろう。
明示的に書かれていないが、既に見てきたレシピから、豚背脂は叩いたもの、玉ねぎはすり潰したものを加えると解釈されよう。
36. 七面鳥のラグゥ仕立て Poulet d’Inde en ragoût
七面鳥を開いて叩く。拍子木に切った背脂をピケ針で刺してもよい。小麦粉をまぶしてフライパンで表面を焼く。陶製の鍋に移してブイヨンを注ぎ、弱火で煮る。味付けし、好みの食材をガルニチュールとして加える。ソースを充分に煮つめる。
Fendez le et battez, puis le piquez si voulez de gros lard, le farinez et passez par la poêle; le mettez ensuite mitonner dans une terrine avec bon bouillon, bien assaisonné et garni de ce que vous voudrez. Faites le cuire jusqu’à sauce courte, et servez.
七面鳥は現代フランス語では dinde (ダンド)だが、古くは poule d’Inde (プゥル・ダンド)あるいは poulet d’Inde (プゥレ・ダンド)と呼ばれた。いずれも「インドの鶏」の意。アメリカ大陸原産だが16世紀にはスペイン経由でフランスにもたらされ、家禽として飼育されるようになった。Dinde という表現はオリヴィエ・ド・セール『農業経営』(1600年)で既に見られるが、17世紀を通じて poulet d’Inde と書かれることが多かったようだ。
ところで、「好みの食材をガルニチュールとして加える」とは、レシピの表現としては乱暴だが、鵞鳥のラグゥ仕立てと同様にレバー、砂肝、手羽など、あるいはマッシュルームやトリュフ、ケイパーなどを加えるということだろう。