「専門料理」連載「エスコフィエを読む」2013年1月号「ブレゼ(1)」の補足記事です.
本文で出てきたように,細長く切った豚背脂を肉の繊維の方向に刺すことをラルデ(larder),そのために使う道具をラルデ針(lardoire ラルドワール)と呼びます.
もともとはロティールに用いる技法で,非常に古くからあります.ラルデという言葉は12世紀のウァース(Wace)という詩人がアングロ・ノルマン語で書いた物語詩 Roman de Brut に出てくるそうです.
ラルデ針のほうは,14世紀ユスターシュ・デシャン(Eustache Deschamps)の風刺詩『結婚の鏡』Miroir de Mariage に出てきます.画像は19世紀の版のものです.調理器具や香辛料の名前がまとまって出てくるくだりにあります.lardouere という綴りです.
ついでに,少し前の行に paelle というのが出てきます.poêle (ポワル=フライパン)のことですね.スペイン語の paella と語源が同じだということがよくわかります.
もうひとつ,paelle trouée というのも出てきます.穴の空いたフライパン… パソワール(passoire ざる,水切り)のことなんですね.